モータースポーツの世界ではレギュレーション違反があった場合、そのチームや選手には罰則が科されるが、最高峰のF1では最高額が100万ユーロ、なんと日本円で1億6000万円以上という、とんでもない高額に設定されているという。
というのも、FIA(国際自動車連盟)の国際競技規定には「F1に参戦するドライバーや関係者は、多くのファンや若い視聴者に影響を与える存在として、高い水準のプロフェッショナリズムを持つロールモデルであるべき」と明記されている。接触事故や言動など「あらゆる非行」が禁じられているのだ。
そんな中、F1チームRB(レッドブル傘下)所属の日本人ドライバー・角田裕毅が侮蔑的な暴言を吐いて罰金を科せられた、と大々的に報じられたことがある。2024年6月のことだ。
角田はF1オーストリアGPの予選Q1(第1ラウンド)最後のアタック直前、キック・ザウバーの周冠有(中国)にピットレーンで割り込まれたこと腹を立て、レースエンジニアのマッティア・スピーニとの無線でのやり取りの中で「These guys are fucking retarded(こいつらマジで頭おかしい)」と口にしたというのだ。ちなにみ「retarded」という言葉は、知的障害を指す医学的用語。現在では差別的、侮辱的な意味合いを持つ、いわゆるスラングだが、一瞬の判断が命取りとなる時速300キロ超えの世界だけに、ヒヤリハットでハラワタが煮えくり返ることもあるだろう。
審査委員会はドライバーとチームの無線を傍聴しているため、つい口をついて出た言葉が厳しい指摘を受けることに。角田は大きなペナルティを食らったのである。
審査委員会の聴取に応じ角田は、こう弁明した。
「英語が母国語ではないため、セッションが終わるまで、使った単語に対する理解が足らなかった」
さらに自身のSNSでも謝罪した。
〈故意で使ったわけではなく、自分でもその正しい意味を完全に誤解していました。今は言葉の意味を正しく理解しています。このような言葉を使う場所ではないし、許されるものではありません〉
競技審判団は角田の誠実な態度を評価したものの、やはり公の場で不適切発言だったという事実は動かないとして、4万ユーロ(約694万円)の罰金が科されることになったのである。
ところが、だ。そんな角田の来季限りでのレッドブル傘下からの離脱が報じられたのは、昨年末のことだった。理由は不明ながら、新天地として、新規参入する米ゼネラルモーターズの「キャデラック」が浮上。角田の動向に、F1ファンからの熱い視線が注がれている。
(山川敦司)