今年6月、横浜FCからアトレチコ鈴鹿クラブへ期限付き移籍。57歳にして現役でピッチに立ち続けているのが、サッカー界のレジェンド、キングカズこと三浦知良だ。9月23日にホームで行われた横川武蔵野FC戦では後半18分に途中出場し、自身が持つリーグ最年長出場記録を57歳210日に更新した。この姿にサッカーファンが抱く感想は様々で、SNSにはそれぞれの見方が並んでいる。
〈見ていてしんどい〉
〈試合に出るだけでいいの?〉
〈ここまでいったらトコトンやり続けてほしい〉
カズの現役続行についてはかねてから「現役にこだわるのではなく、引退してサッカー界発展のために貢献してほしい」という声は少なくない。強烈だったのが、2022年1月に辛口サッカー解説者のセルジオ越後氏が自身のYouTubeチャンネルで言い放った、こんな発言だった。
「プレーヤーとしては無理でしょうね。1シーズンで1点も取れないフォワード、あるいは出場試合が少ないというのは責任問題じゃないですかね、雇っている方のね」
確かにJリーグ初代MVPを受賞してから三十数年。54歳だったカズは2021年のリーグ戦で、わずか1試合に出場。しかも時間は1分とあり、試合への出場も含め、ベンチ入りすることが少なくなっていたことは事実だ。サッカー関係者が語る。
「カズが所属する横浜FCの親会社『LEOC』は、企業の食堂の運営や給食事業を手掛け、同社を傘下に持つ『株式会社ONODEAホールディングス』の小野寺裕司会長は、かつてカズが在籍していたヴェルディのユニフォームスポンサーを務めていました。小野寺会長はカズと同学年。同じサッカー少年だったこともあり、カズ獲得には同氏の強い意向が働いたといわれています。結果的にカズが横浜に移籍したことで報道陣の数は増え、確実にカズ効果が表れた。横浜がカズを手放さない理由はそこにあるとされます」(スポーツ紙サッカー担当記者)
しかし、選手はやはり試合に出てナンボ。いくら懸命に取り組む後ろ姿が若手に影響を与えるとしても、一般的なサッカーファンとしては、試合に出場しない選手が毎回ベンチ入りしていることに、モヤモヤが募っていたことは事実だろう。
つまりセルジオ氏はそんな状況に苦言を呈した、というわけだが、どんな仕事にも引き際はあるものだ。しかし、Jリーグ黎明期からサッカーを観戦してきたファンとしては、あの哀愁を帯びた後ろ姿を見るたび、複雑な思いが胸をよぎるのだ。
(山川敦司)