プロ野球界で2004年に勃発した、オリックスと近鉄の合併に端を発する「10球団1リーグ構想」。当然のことながら、この構想は選手会とファンの猛反発を招き、プロ野球史上初となるストライキに発展した。楽天の新規参入による12球団2リーグ制の維持で決着したものの、この時に選手会が訴えたのは「16球団構想」だった。
その後、2014年には自民党による提言でも「地域活性化の一環で16球団に拡大する構想」が出されて話題にはなったが、政治家主導の提案とあり、野球ファンをはじめ野球界全体がなんとなく抵抗感を抱くことに。結局、実現に向けて進むことなく、時は流れた。
ところがそんな中、「世界の王」の爆弾発言が飛び出した。福岡ソフトバンクホークスの王貞治会長が、2020年1月11日放送のTNCテレビ西日本の報道番組で、こう言ったのだ。
「野球界のためには、できるものなら16、あと4つ球団が誕生してほしい」
この発言を各メディアが一斉に報道すると、球界を揺るがすことになったのである。王氏の見解はこうだ。
「チームは多い方がいい。選手たちにとっても、小さい人も、高校・大学でやっているような人にとっても、受け皿があった方が絶対にいい。16チームならCS(クライマックスシリーズ)もあれこれ言われなくてすむ。12だから変なやり方になっていると言われる」
12球団を2リーグで割ると6球団。それをAクラスとBクラスに分けると3球団ずつになり、現在のCSのように「何ゲームも離された3位球団の下剋上」が起きることで、「シーズンの意味がない」という意見がある。
王氏自身、監督としてソフトバンクを率いた2004年から2005年は、CSの前身となるプレーオフ制度で2位球団に敗れ、日本シリーズ進出を逃した経験がある。そんなことから、以前から16球団に増えた方が公平なルールになる、との思いが強かったという。
一方で「16球団構想」反対派は、球団増加によるレベル低下を主張する。確かに2005年の楽天参入時は、近鉄やオリックスからのドラフトや他球団を自由契約になった選手による「寄せ集め」チーム編成で、初年度は97敗。レベル差は歴然だった。
だが、楽天は5年目で2位に、そして9年目の2013年には星野仙一監督でついにリーグ優勝を果たし、日本一にまで輝いた。
「つまり、当初は実力差があったとしても、高いレベルで戦っていくことで、選手の技術もおのずとレベルアップしていく、ということ。さらに球団数が増え、選手の数も増えれば、実力がない選手は淘汰されていく。16球団にしたからといって、球界全体のレベルが低下するとは言い切れない、との意見は少なくないようです」(スポーツ紙デスク)
考えてみれば、60年以上も球団数が変わらないこと自体、閉塞感があるというか、不思議な話なのだが…。
(山川敦司)