将来は、メジャーでも通用する投手になるのではないでしょうか。西武のドラフト1位、高橋光成です。先週のコラムで紹介した若虎の有望株、横田との対決で逸材ぶりを見せました。
2月18日に高知・春野で行われた二軍の練習試合に先発した高橋は、MAX152キロのストレートで1回を1安打無失点に抑えたのです。
先頭打者の横田には、ストレート狙い一本にしぼるよう指示を出していたのですが、それでも空振り三振したのですから球威は相当です。日本ハム・大谷ほどのアスリート体型ではありませんが、身長188センチ、90キロのバランスのよい立派な体をしています。かつて松坂がルーキー時代にそうだったように、高卒1年目とは思えないほどライオンズのユニホーム姿も似合っていました。ユニホームに着られているのではなく、しっかり着こなしているのです。
マウンドさばきも堂々としており、さすが、13年夏の甲子園で2年生エースとして優勝しただけのことはあります。練習試合での球を見ると、ドラフト1位で競合せずに西武が一本釣りできたことが不思議なくらいです。もちろん、プロ野球の先発投手として長い回を投げるのには、これから体力をつける必要があります。それでも、ストレートの速さというのは打者の遠くへ飛ばす力と一緒で、持って生まれた才能です。18歳の右腕には大物感が漂っています。
阪神にも非常に楽しみなルーキーが加入しました。ドラフト1位の横山雄哉は、身長183センチの本格派のサウスポーです。「左胸鎖関節炎症」で自主トレの調整が遅れていましたが、二軍の高知・安芸キャンプで大器の片鱗を見せてくれました。昨年のドラフトでは早大・有原(日本ハム)、亜大・山崎(DeNA)の抽選クジを外し、いわゆる外れ外れの1位でしたが、よくこれほど力のある投手が残っていたなという感じです。
彼は上から腕を振り下ろす縦の角度に加え、横の角度も持っています。右打者の内角へのストレートがスライダー回転しながら、懐をえぐるのです。右打者への強力な武器となり、シーズン中もバットをへし折るケースが見られるのではないでしょうか。変化球に頼らず、プロでもストレートにこだわる投手になってほしいと思います。これからもっと調子も上がっていくでしょうし、開幕ローテに名前を連ねてもおかしくない力を持っています。
横山だけでなく、ドラフト2位の石崎剛も、大きな期待を寄せられています。横山と同じく新日鉄住金鹿島出身の右腕で、宜野座キャンプで臨時コーチを務めた江夏さんの評価も高かったようです。スリークオーター気味の独特なフォームで、右打者は体に向かって投げられるような恐怖心を抱くはずです。タイプ的にはリリーフで力を発揮しそうですが、先発適性も試している最中です。
チームとしてはメッセンジャー、藤浪、能見、岩田の4本柱に次ぐ先発5番手、6番手の投手が昨季からの懸案でしたが、前述のルーキー2人を加えて候補がめじろ押しです。岩貞、歳内、秋山、金田、岩本、岩崎ら、他のチームがうらやむほどではないでしょうか。開幕ローテの6人に生き残るのは誰か。直前まで激しいサバイバルが続きそうです。
◆プロフィール 掛布雅之(かけふ・まさゆき) 55年生まれ。73年に阪神入団、88年に引退。13年10月、阪神GM付育成&打撃コーディネーター(DC)に就任。著書に「新・ミスタータイガースの作り方」(徳間書店)、「若虎よ! 」(角川書店)など。