昨年夏に勃発した「令和の米騒動」。この時、政府は「新米が市場に流通し始めれば、コメの小売価格は下がっていく」と説明していた。
ところが小売価格は下がるどころか、新米流通後も間断なく上がり続け、今年に入っても異常な高値が続いている。
事実、全国のスーパーにおけるコメの平均価格(5キロあたり。農林水産省調べ)は、昨年6月の2000円~2200円から右肩上がりを続け、8月には2600円超、9月には3000円超、10月には3400円超、そして今年1月(13日~19日)には3627円に達した。昨年6月から見れば、およそ1.7倍もの異常高騰である。
新米流通後も異常高騰が続くのはなぜか。コメの流通現場を取材してきた全国紙社会部記者が、その許されざるカラクリと舞台裏を明かす。
「異常高騰のA級戦犯は流通業者です。一部の流通業者は、昨夏の猛暑による高品質米の不足やインバウンドによる需要増などから『コメの供給不足が起こる』と見込んで、生産者から大量のコメを買い漁りました。このトレンドを見て、新規の流通業者も買い占めに参入したのです。さらに悪質なのは、買い占めたものを秘かにストックし、売り渋りで小売価格をさらに高騰させ、高値売り抜けを目論んでいる点です」
JAをはじめとする集荷業者が昨年、生産者から買い集めたのは216万トンで、例年より21万トン(率にして8%程度)も少なかった。つまりこの21万トン分が、一部の流通業者によって買い占められていたというのだ。
そんな中、政府はようやく備蓄米の放出へと動き出したが、これで小売価格は正常化するのか。全国紙社会部記者が続ける。
「今年、JAが生産者に前払いするコメの概算金は昨年より高く、政府が放出する備蓄米の落札価格も概算金に準じて高くなります。結局、コメを買い占めた流通業者が高値売り抜けを企む限り、店頭での小売価格は今後も上昇し続けていくことになります」
とはいえ、需要が供給を下回れば、価格は下落していく。「売り渋り」を続ける悪徳業者に鉄槌を下せるのは、消費者による「買い渋り」しかないということか。
(石森巌)