事件

認知症・精神障害・寝たきり「ワケあり患者」収容病院は「現代の姥捨て山」/みちのく記念病院「殺人隠蔽事件」の闇【前編】

 みちのく記念病院(青森県八戸市)で発覚した「患者間殺人隠蔽事件」。青森県警は2月14日、同病院を運営する医療法人の理事長で元院長の石山隆容疑者と、殺害された患者の主治医だった弟の石山哲容疑者を、犯人隠避容疑で逮捕した。

 事件が発生したのは2023年3月。被害男性はアルコール依存症で同じ病室に入院していた男性患者に歯ブラシで目や顔をメッタ刺しにされて死亡したが、あろうことか、報告を受けた両容疑者は看護師らに命じて、認知症で入院していた高齢医師(当時89歳、昨年死亡)にニセの死亡診断書を作成させるよう指示したというのだ。ちなみに、遺族に手渡された死亡診断書の死因欄には「肺炎」と書かれていた。

 その後、認知症で入院していた医師がそれまでに作成した死亡診断書は、なんと100枚以上にもなることが判明。同病院で虚偽の死亡診断書の作成が常態化していた疑いが浮上しているのだ。

 みちのく記念病院は急性期の患者を受け入れる一般的な病院とは違い、認知症や精神障害や寝たきりの患者などを収容する、長期療養型の病院である。実は同様の長期療養型病院は全国各地にあまねく存在しており、今回発覚した事件も含めて、かねてより長期療養型病院に潜む闇は深いと言われてきた。

 認知症や精神障害や寝たきりなど、身内に「ワケあり」の患者を抱える家族にとって、長期療養型病院は一種の「駆け込み寺」として機能してきた。地域医療の「最後の砦」と言えば聞こえはいいが、多くの場合、その実態は「現代の姥捨て山」なのだ。

 もちろん、良質な医療サービスを提供する長期療養型病院が存在するのは事実である。しかし、家族には「一般の病院では受け入れてくれない身内の面倒を見てもらっている」との負い目があるため、例えば「入院患者が劣悪な環境に置かれている」という風評を耳にしても、病院側に改善を迫る行動を起こすことを手控えてしまう。その結果、一部の悪徳病院では非人道的な「やりたい放題」が横行することに。

 記憶に新しいところでは昨年、東京都八王子市の精神科病院「滝山病院」で発覚した入院患者への虐待事件もしかり。現在は運営体制が刷新されて、病院名が「希望の丘八王子病院」に改められたが、「事件が表沙汰になるまで状況は改善されない」というイタチゴッコは、今なお全国レベルで続いている。(後編に続く)

(石森巌)

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