ホテルミュージアム「ホテル雅叙園東京(旧名:目黒雅叙園)」が今秋から一時閉館することが明らかになった。突如として発表されたその理由は二転三転。雅叙園の所有者が中国政府系ファンド「中国投資有限責任公司」が出資する外資系ファンドとあって、創業97年目を迎えた目黒のランドマークの行末が案じられている。
ホテル雅叙園東京は1928年、創業者の細川力蔵が芝浦に料亭「芝浦雅叙園」を開業し、その後、海運実業家の岩永家の私邸を改築して日本初の結婚式場「目黒雅叙園」となった。2002年に運営会社が経営破綻。外資系の手に渡り、2014年8月に森トラストが全ての関連施設を買収したが、翌年1月、中国投資有限責任公司から資金提供された米ファンドのラサール・インベストメント・マネージメント・インクに譲渡されていた。譲渡額は1400億円超といわれ、目黒雅叙園からホテル雅叙園東京に名称変更されている。
さらに今年1月、カナダの資産運用会社ブルックフィールド・アセット・マネジメントが雅叙園の土地や建物の一部を取得。同社は世界中で老舗ホテルの再生を手掛けており、改装工事のため、今年10月から2026年3月までの間、一時休館すると発表していた。
ところがTBSなど民放テレビ各局が2月18日に一時休館を報じると、ホテル雅叙園東京は同日、休館理由について「9月30日で建物所有者との定期建物賃貸借契約が満了となるため」と修正。10月1日以降の賃貸借契約については言及していない。
近年の雅叙園はランチやアフタヌーンティーの企画で、マダムを中心に人気がある一方、インバウンド特需で1泊2人12万円からと、一般客には手の届かないホテルへと変貌していた。
地方から親族や名士を呼び寄せる盛大な披露宴はもはや富裕層の特権となる一方で、ささやかな家族婚、親族と友人を集めただけの小さな結婚式、フォトウェディングのみのプランも設けていた。50代以下には結婚式場よりパーティー会場、宴会場のイメージの方が強いだろう。
この20年間、外資ファンドに翻弄されてきた雅叙園と由緒ある調度品、百段階段、日本庭園はどうなってしまうのか。
(那須優子)