昨今、インバウンド需要や国内宿泊需要の回復に伴い、東京都内のホテル料金は軒並み、値上がりしている。ビジネスホテルですら1泊1万円から2万円ほどになり、出張経費の上限が厳しく設定されている会社員からは、悲鳴が上がっている。
そんな中、沖縄県那覇市内の中級クラス(3つ星クラス同等)のホテル従業員たちもまた、値上げの影響で客足が遠のきつつある現状に頭を抱えていた。
那覇市内の中級ホテルの10月のシングルルーム料金は、ハイシーズンが始まる10月初めに1泊8000円から1万円程度に設定されている。9月から10月にかけての沖縄は台風が多いため、観光シーズンである11月以降に比べ、宿泊料金はやや抑えられている。とはいえ、物価の上昇や人手不足により、かつてのような5000円から6000円という価格帯には戻せない状況だ。那覇市内のビジネスホテルに勤務する従業員が嘆く。
「一般的に出張の宿泊経費は1泊7000円から8000円程度に設定されていることが多いのですが、現在の価格では予算オーバーとなってしまいます。そのため出張客は、私たちのようなビジネスホテルではなく、1泊4000円から5000円程度で宿泊できるカプセルホテルを選ぶケースが増えているんです」
カプセルホテルを選ぶ理由は、価格だけではない。最近、沖縄では大浴場付きのカプセルホテルが増加しているからだ。ビジネスホテル従業員が、溜め息をつきなながら続ける。
「これまで沖縄では、大浴場があるのは主に4つ星以上の高級ホテルに限られており、街中に銭湯もほとんどありませんでした。しかし本州からの出張客を中心に、大浴場の需要が高まっています。私たちのビジネスホテルには大浴場がなく、価格でもカプセルホテルに対抗できないため、他のサービスで付加価値を提供しようとしていますが、現状は厳しいです」
カプセルホテルの増加に伴い、沖縄の宿泊市場は大きな変化を迎えている。今後、ホテル業界全体で独自性を打ち出す工夫が、いっそう求められることだろう。