今年3月、阪神タイガースの「新ファーム施設」が尼崎市内にオープンする。地球環境に配慮した「ゼロカーボンベースボールパーク」の中核施設として整備される新ファーム施設は、2軍戦が行われる「日鉄鋼板SLGスタジアム尼崎」のほか、「屋外練習場」「室内練習場」「選手寮」「クラブハウス」などを兼ね備えた最新鋭施設で、パーク内にある一般向けの周遊ルートからは、屋外練習の様子を見ることができる。
西宮市内にあった旧ファーム施設は「阪神鳴尾浜球場」と「虎風荘(独身寮)」からなる年代モノの施設で、育成環境や練習環境の改善が急務と言われてきた。球団にとっても選手にとっても、新ファーム施設の建設は悲願のプロジェクトだったのである。
ところが完成した新ファーム施設をめぐっては、最新鋭施設ゆえの「副作用」が囁かれている。在阪メディアのトラ番記者が指摘する。
「新ファーム施設には快適に過ごせる選手寮やクラブハウスが併設されているほか、『タイガース練習場』と名づけられた屋外練習場が、甲子園球場の内野部分だけを再現した黒土になっています。選手にとってはまさに、至れり尽くせりの練習環境。そのため、一部OBの間からは『居心地が良すぎて2軍暮らしから抜け出せなくなる選手が出てくるのではないか』と懸念する声が上がっているのです」
昨秋、虎風荘の寮生選手らが建設中の新ファーム施設を視察した際、視察メンバーのひとりだった前川右京外野手は、
「すごく練習できる環境です」
こう声を弾ませながらも、次のように気を引き締めてみせた。
「あまり(新施設の)お世話にならないように、寝るだけの生活(練習に没頭すること)を心がけたい」
OBの心配が「老婆心」で終わってくれればいいが。
(石森巌)