プロ野球の昨シーズンを振り返ると、セ・パ両リーグを通じて3割打者(規定打席到達)はわずか3人。逆に防御率1点台(規定投球回到達)の先発投手は6人に達した。ちなみに1試合あたりのチーム平均得点はセ・リーグが3.19、パ・リーグが3.35となっている。
そんな「投高打低」のプロ野球が激変するかもしれない。バットに関する規則が2025年シーズンより変更され、「牛骨バット」が解禁されるからだ。
怪童のニックネームで知られ、5度の本塁打王に輝いた中西太が愛用していたのが牛骨バット。NPB(日本野球機構)のバットに関する規則の変更によって、1981年以降は使用を禁止されていたが、調査の結果、従来のバットと比較しても反発係数がほとんど変わらいことが判明した。そこで44年ぶりに使用できることとなったのである。
牛骨バットといっても、牛の骨で作られているわけではない。牛骨などの硬質なものでバットの表面をしごき、木目を詰める加工を施したものを指す。アメリカのバットメーカーでは一般的な加工法であり、多くのメジャーリーガーがこのバットを使用している。スポーツ紙デスクが言う。
「中西さんは実際に脂がついた牛のあばら骨でバットをメンテナンスしていましたが、各バットメーカーは専用の機械を使って表面をしごいています。当然、飛距離は変わりません。しかし打感はやや異なり、打球音は高く乾いた音になるとか。音だけを聞いたら、金属バットと勘違いする人が出てくるでしょう」
牛骨バットの開発・製造を積極的に行っているメーカーがミズノだ。現在、50人以上の現役選手とブランドアンバサダー契約を結んでいるが、
「ミズノの契約選手ではソフトバンクの近藤健介、DeNAの山本祐大ら、20人以上が今季キャンプから導入していると聞いています。他メーカーでは、ヤナセも阪神の近本光司に牛骨バットを提供。彼らの活躍次第では、2025年シーズン以降、球界で牛骨バット旋風が巻き起こるかもしれません」(プロ野球アナリスト)
従来のバットと牛骨バットは、ほとんど見分けがつかない。選手たちの打球音でその違いを実感してほしい。