エンゼルスの菊池雄星が開幕投手に指名された。ドジャース・山本由伸、カブス・今永昇太が開幕戦で投げ合うことが内定しているが、「勝つ」という意味では、菊池の責任はこの2人よりも重そうである。
エンゼルスは昨年、球団ワーストの99敗を喫した。
「地元アナハイムのメディアは、開幕戦でコケたら皮肉を込めて『100敗目』と書きますよ」(現地特派記者)
2023年までチームを支えた大谷翔平は「お隣のロサンゼルス」で大活躍、アナハイムのエンゼル・スタジアムでは閑古鳥が鳴いていた。
球団は補強に注力し、スプリングキャンプを迎えたわけだが、そこで「先発陣の大黒柱になってほしい」と迎えたのが菊池だった。その菊池が開幕戦で炎上するようなことになれば、「昨年のモヤモヤ感」も合わせて大バッシングを浴びると懸念されている。
昨年の菊池はブルージェイズとアストロズで計32試合に先発して9勝10敗。とりわけアストロズ移籍後は5勝を挙げるなど、チームの地区に大きく貢献した。この「アストロズ移籍後」の好調ぶりが、開幕投手の重責を果たすカギになる。
「スライダーの割合が移籍後に変わりました。ブルージェイズ時代は10%ほど。アストロズ移籍後は26%に増えたんです」(前出・現地特派記者)
単にスライダーが冴えていたからではない。捕手ビクター・カラティーニの配球術によるものだ。カラティーニはカブス、パドレスに在籍した頃、「ダルビッシュ有のパーソナル捕手」と言われていた。配球の巧さには定評があったが、ダルビッシュと組むことでさらに磨きがかかり、「日本人投手が好む変化球の組み立て」がわかってきたという。
「ウィニングショットがスライダーであれば、そのの曲がり具合を大きく見せるための別の変化球が必要となります。あるいはスライダーを相手打者に意識させ、実際には投げなかったり。こういう配球が開幕戦でもできればいいんですが」(メジャー関係者)
エンゼルスの今季のレギュラー捕手には、25歳のローガン・オホッピーが予想されている。ワーストレベルだった盗塁阻止率は改善しつつあるが、配球は発展途上のままだ。2024年オフ、今季36歳のベテラン捕手トラビス・ダーノも獲得した。ダーノとのバッテリーに期待したいが、そのダーノは「オレはオホッピーを正捕手にするサポートがしたいんだ」と話している。菊池もオホッピーに配球の妙を教えていくしかない。
「オホッピーは大谷とバッテリーを組んだことがあります。大谷には160キロ強の直球とスイーパーがあり、力で相手打者をねじ伏せることができましたが」(前出・メジャー関係者)
メジャー7年目で掴んだ晴れ舞台ではあるが、喜んでばかりはいられない。
(飯山満/スポーツライター)