日本プロ野球界を代表する球団マスコット「つば九郎」担当者の訃報発表から10日あまり。ヤクルト球団の公式ネットショップには「つば九郎」グッズの注文が殺到し、シーズン前に完売するという異例の事態になっている。ネットショップ公式サイトでは、次のように告知している
〈2/19以降、Official Net Shopのご利用者数が急増しております。これに伴い、サーバーの増強を図ってはおりますが、時間帯によっては多くのアクセスが集中するため、アクセスしづらい状況となっています。また、在庫がある商品へのご注文の場合でも、ご利用者数の急増に伴い通常よりも発送の遅れが発生する見込みです〉
アクセスできても、つば九郎グッズは半分以上が完売している。例年、十分な在庫を準備しているTシャツはすでに売り切れ、タオルも人気柄は欠品となっている。
つば九郎は選手ごとのグッズ売り上げランキングで過去10年、ほぼトップを走る。2位に落ちたのは2022年だけで、この年の1位は流行語大賞にもなり、王貞治氏を抜く日本選手最多の56本塁打、史上最年少三冠王の村上宗隆だった。
余波はJR東日本にまで及んでいる。神宮球場の最寄駅JR総武線信濃町駅の駅ビル「アトレ信濃町」2階にある「つば九郎神社」では、つば九郎の好物「るーびー」缶ビールや花を、フロアの足の踏み場がないほどに供えていくファンがあとを絶たない。神社が〈大変恐れ入りますが、献花、お供え物等はお控え頂きますようお願い申し上げます〉と掲示する事態になっている。
つば九郎の担当者は、肺に血液を送る動脈の血圧が高くなって心不全を起こす、肺高血圧症を患っていた。何かを悟っていたのだろう。2023年3月5日、公式アメブロに次のように寄せていた。
〈いつか、いつのひか、このあしあとのさきに、つばくろうがいなくなったら、そらをとんだとおもってください〉
親交のあった落合博満元氏はその世界観を守り、訃報が報じられると、
〈暖かい場所にいるんだな。しっかり羽根を休めてゆっくりと休むんだぞ〉
と追悼した。「つば九郎がいなくなった日」に触れた昨年から、ヤクルト球団とつば九郎は「その日」が来た時に、永遠に暖かい空で過ごすのか、気が向いて神宮球場に戻ってくるのか、どちらであってもファンが納得する設定を考えていたように見える。
妹のつばみは2月23日、沖縄でのDeNAとのオープン戦に登場。
〈最後に…つばみは前からスケッチ書いてるよ! 漢字とかもお勉強したから書けるよ!! いつも通りだよ だから大丈夫だよ〉
とファンを気遣った。つばみはいつも通り、フリップもダンスも頑張っている。大事な仲間を失ったヤクルト球団は「これからのつば九郎」設定について、時間をかけて熟考してほしい。
(那須優子)