近年、特殊詐欺を繰り返すような集団を警察は「トクリュウ」(匿名流動型犯罪グループ)と呼ぶ。その名の通り、一定の組織形態はない。「ルフィ」の名を出すまでもなく、指示役は正体を隠し、遠く海外から命令を下していることが多い。
また、今回ミャンマーで詐欺集団が1万人規模まで勢力を拡大した背景には、21年に国軍が起こしたクーデターが影響している。国軍と少数部族が武力衝突する中、中国マフィアが客足の減ったカジノを実効支配していたのだ。
こうした実態について、特殊詐欺犯罪に詳しいライター・根本直樹氏が解説する。
「ルフィと称してフィリピンから強盗の指示を出していた渡辺優樹被告らのグループは、特殊詐欺が高じて強盗へと転じた。しかし、リスクが高いわりに得るものが少ないため、強盗に走るグループは減少しました。一口に『トクリュウ』といってもグループによって得意分野があり、手口も多様化しています。もともとは振り込め詐欺が最初でしたが、手口が電話からSNSを駆使したものなど、多様化しています。最近だとSNSで投資をうたい、金で買ったサクラのフォロワーを動員して確実に儲かるかのように装って、一般人から金を騙し取るといった手口がよく見受けられます」
しかも、こうした詐欺犯罪を根絶する見通しはまだ立っていないというのだ。
「ふざけた話ですが、彼らから『人が宝』なんて言葉を聞いたことがあります。実際に水際で詐欺を行う人員が命だという意味ですが、リクルートの仕方も、いきなり顔写真付の身分証明書を要求したりはせずに、一度リアルで会って、個々にどんな仕事をしたいのか聞いたり、いろんな名目で脅して逃げられないようにするなど、工夫がされています」(根本氏)
ミャンマーでは大量の「かけ子」が一網打尽となったものの、所詮はトカゲの尻尾切り。本丸である「指示役」が摘発されない限り、特殊詐欺の魔の手は依然として眼前の脅威と心得るべきだろう。