3月18日から甲子園球場で選抜大会が始まる高校野球で、関係者が頭を悩ませているのは高校授業料の無償化だ。特待生が野放図になる可能性があるからである。
特待生が社会問題化したことを受けて、日本高等学校野球連盟は2007年に一定の制限をかけたが、授業料が無償化となれば、授業料などが免除される特待生という概念がなくなる。有力中学生の獲得競争、それにまつわる裏金が横行するのではないか…そんな懸念が持ち上がっているのだ。
自民、公明、維新の三党で、2025年度予算成立と引き換えに合意した高校授業料無償化。今年4月から全国の公立高校で授業料が無償となるとともに、私立については全国平均授業料の45万7000円に支援金が増える。在京プロ球団のスカウトが言う。
「野球名門校は全寮制の学校が多いのですが、授業料と寮費を合わせて、支援金額程度に抑えてくるでしょう。どの生徒も無償の特待生となりますから、各校のスカウト合戦が過熱化するのは明白です。キューバなどカリブ海からの留学生も、とり放題になる。野球技能が高くなくても身体能力の高い子が名門私立に入りやすくなるため、私らも注目選手が多くなると思います」
高校授業料無償化については、維新が「与党」になったため、年収の壁引き上げも十分に行われない。また「中退者まで税金で面倒を見るのか」「留学生にまで税金を使うのか」など、国民からの批判は多い。
今春のセンバツでは21世紀枠で壱岐(長崎)、横浜青陵(神奈川)の2校が選ばれたが、無償化で特待生制限が実質的に解除になり、私学がますます強くなる。21世紀枠などの制度ではないと、公立校はますます甲子園が遠のく。
(健田ミナミ)