3月11日午前、JR山手線・高田馬場駅近くの路上で生配信中の女性ライバーが男性視聴者に刺殺されるという、衝撃的な事件が発生した。
殺害されたのは動画配信アプリ「ふわっち」で2600人以上のフォロワーを抱えていた、22歳の人気女性ライバー。この日、女性(東京都内在住)は「山手線徒歩1周」なる企画でライブ配信を行っていたところ、栃木県内に住む42歳の男性視聴者に突然、顔や首や胸や腹などをサバイバルナイフでメッタ刺しにされたのだ。
その後、男は駆けつけた警察官らに殺人未遂容疑で現行犯逮捕されたが、その間、男は意識不明に陥った女性の頭部などを無言のまま蹴り続けたほか、女性のスマホを奪って、血まみれで横たわる様子を撮影。その生々しい映像はそのまま、ライブ配信された。
警視庁捜査1課は女性が搬送先の病院で死亡したことから、容疑を殺人に切り替えて動機などを詳しく調べ始めているが、男はこれまでの取り調べに対し、
「3年ほど前から女性にカネを貸し始めた。消費者金融からも借り、これまでに200万円以上を貸したが、返してくれないので犯行に及んだ。昨年1月には女性との金銭トラブルを栃木県警に相談していた」
などと供述しているという。これが事実なら、犯行の動機はカネを返そうとしない「頂き女子」に対する報復だった可能性が浮上してくる。
しかし、そのような「現実」がベースにあったとしても、それだけで常軌を逸した犯行を説明することはできない。もうひとつのカギは「妄想」だ。
SNSをはじめとするネット空間は、憎悪を爆発的に増幅させる装置でもある。中でも仮想世界におけるライバーとリスナーの関係は濃密で、今回の容疑者は女性が働いている飲食店を訪れるなど、リアル世界でも関係性を深めていたとされる。
一部報道では「女性が男のアカウントをブロックしていた可能性がある」と伝えられており、カネを返さないばかりか、アカウントまで凍結した女性に憎悪を募らせ、妄想をエスカレートさせていった…とも考えられるのだ。
妄想と現実が怪しく交錯するネット空間。捜査当局は目下、容疑者の責任能力の有無も含めて、慎重な捜査が進めている。
(石森巌)