悪質ホストクラブの一掃などを目的とした「風営法改正案」。政府は今通常国会での法案成立を目指しており、遅くとも年内には施行される見通しとなっている。
今回の改正案では、客側の恋愛感情につけ込んだ「色恋営業」をはじめ、料金についての「虚偽説明」、注文していないメニューの「提供」などの禁止が新たに盛り込まれた。
さらに、ツケを支払わせる目的で客を威迫する行為、中でも女性客に対する威迫によって売春などを斡旋、強要する行為もご法度とされたほか、性サービス店などからのスカウトバック(紹介料対価)の禁止も明記されている。
同時に違法行為へのペナルティーが「新設」された。色恋営業などに対しては「業務停止」などの行政処分が下されるほか、ツケを支払わせるための一連の威迫行為については、最大で6カ月の拘禁刑や、100万円の罰金刑が科されることになったのだ。
それだけではない。今回の厳罰化は「ホストクラブ」のみならず、「キャバクラ」「スナック」「待合」など、客に対する「接待」を行う飲食店全店がターゲットにされていることから、業界内で大きな波紋が広がっているのである。
筆者の知人にあたるキャバクラ経営者も、次のように困惑の声を上げて憚らない。
「キャバクラは男性客を色仕掛けで『ソノ気』にさせてナンボの業態です。ナンバーワンクラスのキャバ嬢ともなれば、メールでのやりとりをはじめ、同伴やアフターを精力的にこなし、男性客に高級洋酒のボトルを『おねだり』するケースも少なくありません。正直、色恋営業を禁止されたら…これじゃ、ウチらの商売は成り立たなくなってしまいます」
この点は東京・銀座の「高級クラブ」や京都・祇園の「老舗お茶屋」といえども、全く同じである。いずれも「色恋」が商売のキモになっているからだ。
もちろん色恋営業がバレなければ、摘発されることはない。しかし、警察は捜査員を秘かに潜入させるなどして、あの手この手で証拠を掴もうとするだろう。その場合、「客も納得している」との言い訳はまず通用しない。客側が納得していようがいまいが、店側の違法行為が認められれば即、摘発の対象とされてしまうからである。(後編に続く)
(石森巌)