今年1月に召集された通常国会での可決・成立を経て、遅くとも年内に施行される見通しとなった「風営法改正案」をめぐっては、「施行直後から大規模な一斉摘発が全国レベルで実施される」との観測が流れている。
中でも警察当局の重点取り締まりの対象と目されているのが「無許可営業」と「名義偽装」である。順を追って説明していこう。
風営法上の営業許可を得ていない確信犯的業者がお縄になるのは当然だが、実は当局が秘かに狙っているのは「深夜酒類提供飲食店営業」の届出だけで営業しているガールズバー、ボーイズバーなどの、非接待型の飲食店とされているのだ。
風営法上の営業許可を得た接待型飲食店の場合、営業時間は基本的に深夜0時までと定められている。一方、深夜酒類提供飲食店の営業は深夜0時以降も可能だが、風営法で認められている接待サービスは厳禁とされている。
にもかかわらず、深夜0時以降の営業を含めて、こっそりと接待を提供している深夜酒類提供飲食店は少なくない。当局はこのような隠れ無許可営業店の大々的な摘発を目論んでいるのだ。
同様に今回の改正では、風営法上の営業許可を得ているホストクラブチェーンなどの実質的オーナーが、各店舗の店長などをニセの経営者に仕立てて自らの摘発を逃れる「名義偽装」も、当局による徹底摘発のターゲットとされている。そこには「逃げ得は絶対に許さない」という、当局の並々ならぬ意思が読み取れるのだ。
しかも無許可営業や名義偽装に対する罰則は、個人の場合は最大で5年間の拘禁刑か1000万円の罰金刑、法人の場合の罰金刑はなんと、最大で3億円へと強化されている。経営者にとっては、まさに戦慄の風営法改正なのだ。
しかし新風営法が予定通りに施行され、大規模摘発が実施されたとしても、現状が大きく改善される保証はない。これまでの数次にわたる改正がそうであったように、違法営業がさらにアングラ化していく懸念があるからだ。
カネを儲けたい店側と、欲望を満たしたい客側。当局とのイタチごっこは、永遠に繰り返されていく宿命にあるのかもしれない。
(石森巌)