聞こえてくるのは「浮かれるな!」。阪神タイガースの快挙に対する声だ。
エキシビションマッチながら、カブスとドジャースに連勝。「世界一のチームに勝ったのだから、阪神が世界一」と騒ぐ状況に、球団OBや一部の虎党は顔をしかめている。
2試合連続の完封勝利に、帯同しているアメリカ人記者からは「阪神ならメジャー下位のチームに十分勝てる」とのコメントが。だがよくよく考えると、社交辞令、リップサービスの意味合いが強い。
ファンのみならず、関西スポーツマスコミもこの2試合の結果に大盛り上がり。才木浩人が大谷翔平を無安打に抑え、佐藤輝明がサイヤング賞2度のブレイク・スネルから3ランを放ったが、
「ファンなら騒ぐのはいいとしても、マスコミもですからね。浮かれていると大変なことになりますよ。カブスもドジャースも、開幕シリーズに向けての調整試合でしょう。100%の全力ではないですね。ケガでもしたら大変なことになりますから」
カブス、ドジャースの選手にとって、今回の来日は半ば観光気分。ドジャースのクレイトン・カーショーは復帰に向けてリハビリ中ながら、家族連れで来日。ほかにも築地散策や居酒屋めぐり、ポケモンの本社を訪れるなど、インバウンド観光客のような行動の選手は多い。その合間を縫ってのエキシビション試合とあって、勝ち負けや結果は二の次、三の次なのだ。
だが、どんな試合でも勝ちは勝ち。結果を残した選手には大きな自信になるが、
「これが大きな落とし穴になりかねない」
と口にする阪神OBは、続けてこう言った。
「勘違いする選手が出てこないかと、心配になるんですよ。俺のピッチングやバッテイングは十分、メジャーの一流選手にも通用する…などと思い込んだら大ゴトです。しかも今回の結果で我も我もメジャーでプレーしたいとなり、オフには大騒動が起きる可能性がある。浮かれ気分でシーズンに入ったら、足元をすくわれかねません。この時期は問題点を明らかにして、最後の調整をするものだから」
世界一に勝ったから世界一と盛り上がりたい心理は分かるが、それこそ「勝って兜の緒を締めよ」だろう。
(阿部勝彦)