大の里か高安か、はたまた尊富士か。大相撲春場所の後半戦、高安に敗れた大の里が尊富士を下して優勝戦線に踏みとどまった。新横綱の豊昇龍が休場しただけに、ここは優勝して、横綱に昇進するための存在感をアピールしたいところだ。相撲ライターが言う。
「実力的には大の里が頭ひとつ抜けていることは、誰もが分かっています。ただ、豊昇龍があんなに簡単に負けてしまっては、12勝を2場所続けて挙げたからといって、横綱に推挙するわけにはいかない。ここは誰もが納得する成績を残してもらわないと、横綱審議委員会の沽券にかかわる」
確かにドイツ文学者の高橋義孝氏が10年間、委員長をやっていた頃に比べると、横審は軽くなった。女優が委員を務めたりと親しみやすくなった反面、テコでも動かないと己の信念を貫く人がいなくなった。豊昇龍を横綱に推挙した時も、もうひと場所見てみようと主張する委員はいなかったのか、不思議でならない。先の相撲ライターが嘆息する。
「今の時代、人の意見に左右されたり、態勢に流されるのが当たり前になった。それが世の流れなんです。横審のメンバーといえども、違うものを求めるのは難しい」
ならば大の里には14勝、15勝という高いレベルの連続優勝を成し遂げてもらうしかあるまい。
(蓮見茂)