大関から陥落して臨んだ名古屋場所で8勝止まりと、二桁に届かなかった霧島の調子が、ようやく元に戻ってきた。大相撲秋場所2日目の熱海富士との対戦では、立ち合い霧島の右の腕を抱えて強引に寄り立てる熱海富士を土俵際、下手投げで体を入れ替えた。サーカスのように見えた一番だった。相撲ライターが言う。
「ここ3場所の霧島とは別人のような一番でした。2人は霧島が優勝した昨年の九州場所14日目にも対戦しました。結びで2敗同士の直接対決でしたが、霧島が寄り切りで下しています。この時はもろ差しにされながら、馬力で熱海富士をもっていき、態勢を入れ替えた」
今場所の一番と似ていなくもないが、体がよく動いている。好調時と遜色ない動きが戻ってきたことは、これからの相撲を占う上で重要なことである。
そして最も気になるのは、大関候補の筆頭たる大の里との一番だ。前出の相撲ライターによれば、
「今年の夏場所のことです。踏み込み十分で左四つ、頭をつける絶好の形になりながら、霧島は大の里が前に出るだけで後退。そのまま寄り切られてしまった。十両の力士と大関の一番を見るようでした」
霧島ファンにとってはショックだったろう。192センチ180キロの巨漢・大の里と、186センチ136キロの霧島。平幕と大関の初顔合わせの対戦は平幕が圧勝と、通常では考えられない結果に終わったのだ。
「二度と恥をかきたくない…最も気にしているのは霧島本人ですから、横綱に手が届きかけた元大関の意地にかけて、そうやすやすとは不覚を取らないと思いますよ」(前出・相撲ライター)
つまり、今場所の行方と今後を決める2人の試金石となるのだ。
(蓮見茂)