大相撲が今、激流のただ中にいる。審判部から「九州場所を大関獲りの起点と考える」と伝えられたのは若元春だった。年明けの初場所は琴桜、豊昇龍にとっての横綱挑戦の場所であるばかりではなく、若元春の大関挑戦の基礎固めの場所になった。相撲ライターが言う。
「若元春にとっていちばんの難敵は、3勝15敗と大きく負け越している豊昇龍です。2人はいい稽古相手で、場所前になると12番ほど、三番稽古をやっている。本人は『いろいろ練習しながら、立ち合いも試している。左四つへ最終的になればいい』と語っていますが、本場所では豊昇龍はなかなか左四つを許さない。『若元春関は四つを組むと強い』と豊昇龍は謙遜しますが、秘策を練っている。九州巡業が終わり、帰郷すると出稽古も交え、磨きをかけていくはずです」
二所ノ関部屋の大の里とはどうかといえば、本人が出稽古に出かけない限り、あまり稽古することはない。
一方、琴桜に対しては7勝11敗。勝ったり負けたりを繰り返している。先の相撲ライターが言う。
「2人の対戦は地位の差ほど大きくはありません。それは琴桜が若元春と同じ左四つであるからです。琴桜には九州場所優勝の勢いがありますが、左四つになり頭をつけられると、勝敗の行方はわかりません」
出場の可否が判然としない照ノ富士や、九州巡業を休場した霧島に、若元春が不覚を取るとは考えにくい。1年半前、大関昇進のチャンスを得た頃に比べると、相撲がひと回り大きくなったからだ。
「間違いなく力がついたということです。大の里、豊昇龍、琴桜に対しても、全敗はないと思う。つまり、二桁勝ちは十分あるということです」(前出・相撲ライター)
ますます、初場所の行方が楽しみになってきた。
(蓮見茂)