相撲界に、前代未聞の〝ちょんまげ大関〟が誕生する。
9月22日に千秋楽を迎えた大相撲秋場所は、関脇・大の里が13勝2敗で2度目の幕内優勝を決めた。
大の里は千秋楽こそ同じ関脇の阿炎に不覚を取ったが、これで夏場所以降の3場所で34勝と、大関昇進の目安とされる「3場所を三役で計33勝以上」をクリア。取組後、審判部の高田側部長(元関脇安芸乃島)は臨時理事会の招集を要請したことを明かした。
「これで事実上、大関・大の里の誕生が決定です。25日の伝達式は大銀杏を結えないままで迎えますが、これは史上初の出来事。それだけ大の里の出世が早く、髪が伸びるのが追いつかなかったということです」(相撲ライター)
石川県出身の力士が大関に昇進するのは、輪島、出島に次いで3人目となるが、大の里の大関昇進は、数々のスピード記録を更新することとなった。
「初土俵から所要9場所での大関昇進は、羽黒山、豊山、雅山の12場所を大幅に更新する昭和以降最速記録。新入幕から大関までの所要5場所は、大鵬の6場所を抜く最速記録。また、初土俵以来負け越しなしでの大関昇進は、昭和以降で武蔵山、羽黒山に次いで史上3人目の記録です」(前出・相撲ライター)
なお、大の里は今場所、敢闘賞と技能賞を受賞したが、これで新入幕から史上初の5場所連続での三賞受賞となった。大谷翔平じゃないが、とにかく記録づくめなのだ。
NHK大相撲中継で千秋楽の解説を担当した舞の海秀平氏は「大の里にはいつまでも大関にとどまっていてほしくない」と、早い時期の横綱昇進を切望している。
ちなみに、横綱昇進の目安は大関で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績を上げることだ。つまり、九州場所と来年の初場所まで大の里が優勝するなら、なんと春場所にも横綱・大の里が誕生する可能性がある。
だが、そこに立ちはだかる相手が現れる可能性が高い。その筆頭はやはり、尊富士なのではというのが、関係者やファンの総意だ。
尊富士は今場所、13勝2敗で十両優勝。来場所には幕内に復帰する可能性が高いが、当然、幕内で優勝争いする力がある。たとえ番付下位でも優勝争いに絡んでくれば、来場所終盤に「大の里×尊富士」という、角界の未来を担う大一番が見られるというわけだ。
尊富士は、大の里でさえできなかった「新入幕、即優勝」という離れ業を成し遂げている。令和の相撲界を担う2人の「怪物」が、優勝や横綱の座を争って対決する姿を早く見てみたい。
(石見剣)