気象庁が現行の「緊急地震速報」の対象に「長周期地震動」を加えることを決定した。新システムの運用は、今年2月1日から開始される。
長周期地震動は「大地震で生じる周期の長い揺れ(ゆっくりとした大きな揺れ)」のことで、震源から遠く離れていても、高層ビルやタワーマンションなどの高層建築物を長時間にわたって大きく揺らす。
現在、気象庁はその長周期地震動の揺れを4階級に区分している。階級1は「吊り下げてあるものが大きく揺れるほどの揺れ」、階級2は「物につかまらないと歩くことが難しいほどの揺れ」、階級3は「立っていることが難しいほどの揺れ」、そして階級4は「這わないと動くことができないほどの揺れ」とされている。このうち新たな緊急地震速報の対象となるのは「階級3以上」の長周期地震動である。
だが、多くの専門家からは「緊急地震速報に長周期地震動を加えたところで、問題は何も解決しない」との厳しい声が上がっている。地震工学の専門家もこれに同意して、
「最大の問題点は、高層ビルやタワマンなどの高層建築物は地震で倒壊することはない、と考えられていることです。しかし、高層建築物が持つ固有の揺れの周期と、長周期地震動の揺れの周期が一致すると、高層建築物の揺れは際限なく増幅していき、やがて設計限界を超えて倒壊することになります」
直下型地震などで生じる通常の地震波も同様だ。地盤の液状化によって基礎杭や支持層などが根こそぎ持っていかれる「側方流動」が発生したり、16年の熊本地震の本震で初めて観測された、破壊的な「長周期パルス」の一撃を食らったりすれば、高層建築物といえども、あっさりと倒壊してしまうのだという。地震工学の専門家が、さらに指摘する。
「にもかかわらず、国の防災当局も自治体の防災当局も、予想される反響の大きさに尻込みして、真実を伝えようとしません。その結果、真に必要とされる抜本的な対策が何も講じられないまま、根拠のない安全神話だけが独り歩きする事態に陥っているのです」
ウソや歪曲や隠蔽のない情報開示こそ、全ての出発点になるということだ。