東洋医学では春は「肝臓の季節」と言われており、この時期、肝臓の養生が肝要とされている。
紀元前206年頃に編纂され、現存する中国最古の医学書「黄帝内経素問」には、春の3カ月間は「発陳」とある。「発陳」とは、冬の間に溜まっていたものを体の外に出していくという意味で、血の貯蔵庫の肝臓がフル回転する時期だという。
肝臓の働きは細かいものを入れれば、少なくとも500以上あるとされ、臓器の中でも非常に大きな役割を果たしている。
この肝の働きを助けるのが酸。代表的な酸を含む食品は、酢、梅、苺、レモン、オレンジ、ゆず、トマトや鉄分を含むシジミ、レバー、ほうれん草など。しかし、注意しなくてはならない点もある。
老舗の漢方製薬会社・建林松鶴堂の管理薬剤師・山田徳子さんが言う。
「シジミはアミノ酸、タウリン、ビタミンB2、ビタミンB12鉄分、カルシウム、亜鉛、オルニチンなどが豊富で『生きた肝臓薬』とも言われています。しかし、肝機能障害を起こしている人には近年の研究で、逆に症状をさらに悪化させてしまうことがわかってきました。今の時期には量を控えるべきです」
肝臓には、もともと鉄分が多く蓄えられている。そして、肝脂肪や肝炎になると鉄分が異常に多くなり、活性酸素が大量に発生し症状をさらに悪化させる。つまり、肝機能障害を起こしている人は、むしろ鉄分の多い食品を控えるべきなのだ。同様の理由でほうれん草やレバーの摂り過ぎもよくないという。
いずれにせよ、この時期、肝臓にとって重要なのは「解毒」と呼ばれる肝機能の回復・再生だが、前出の山田氏が最後にこうアドバイスする。
「解毒促進には小食、断食が効果的です」
肝臓に良いとされる食物も取り方を間違えると“毒”にもなるということを覚えておこう。