そんなつまらない理由で欧州移籍をやめてしまったとは、なんとも残念な話である。サッカー元日本代表の柿谷曜一朗のことだ。
柿谷は2007年のU-17W杯で活躍し、プレミアリーグのアーセナルやセリエAのインテル、ラ・リーガのレアル・マドリードの練習に参加。移籍に向けて動いていた。どこも柿谷を高く評価し、特にアーセナルは今すぐ移籍してくれとオファーを出したが、全て断って日本に帰ってきた。
那須大亮氏のYouTubeチャンネルに登場した柿谷は、10代の若さで海外でひとり暮らしが怖かったとした上で、アーセナルで起きた「事件」が帰国を決意させたと明かしたのである。
「練習の後の食事でベンゲル監督に呼ばれて、ティエリ・アンリ、ソル・キャンベル、ロベール・ピレスがいる卓に呼ばれた。僕の横にキャンベルがいて、水を入れてくれたので会釈をした。そうしたら『おい、なんやこれは!』って言われた。俺は『ありがとうございます』って言っても(キャンベルは日本語が)分からないから、目を見てちゃんと会釈したのに、めっちゃ怒られた」
それがあまりに怖かったため、早く日本に帰りたいと思わせたのだという。だが話がここで終わらないのは、さすが大阪出身。柿谷はこう続けて、笑いに変えるのだった。
「横でアンリがめっちゃ笑っていて『先輩に入れてもらったらThank youってちゃんと言わなあかんで』って。アンリとベンゲル、めっちゃ笑っていた。キャンベルは縦社会でめっちゃ厳しい人でもう、むっちゃ怖くなってしまって、飯なんかいらんから帰ろうとなったのを覚えている。通訳が『日本では会釈がありがとうございます、ということだ』とキャンベルに言ってくれたんですよ。でも『知らん。ちゃんと言葉で言え』みたいな。絶対イヤや、帰ろ。それがいちばんの原因だったと思う」
アーセナルやイングランド代表で鉄壁の守備を見せたキャンベル。まさか柿谷の欧州移籍まで止めていたとは、本人も知らないだろう。
(鈴木誠)