「希望」には辛い一面も潜んでいる。
中日は4月8日の広島との一戦を引き分けた。これで中日の延長戦に及ぶ引き分け試合は今季2度目。「10試合で2度の痛み分け」はちょっと多いが、その原因は打線が沈黙していることに尽きる。このチームの打線低迷は今に始まったことではないが、昨年までとは様相が異なる。ファンからの強いバッシングが出ていないのだ。
「開幕から若い石川昂弥が4番を務めています。石川に対して『打ってくれ』や『早く主砲として…』という思いの方が、バッシングよりも強くなっているんだと思います」(名古屋在住記者)
石川はここまで全10試合に4番・三塁で出場し、打率1割2分8厘、本塁打ゼロ、3打点。他球団の4番打者と比較すれば、バットマンとしての成績はワーストだ。チーム全体で見ると、チーム打率1割8分6厘、10試合の総得点は16。1試合あたり1.6点の計算となる。
チーム打率は12球団ワーストだが、チーム防御率は2.13で、こちらはリーグトップ。つまり、投手陣は頑張っているが、2点目を取られた時点で「ジ・エンド」の試合が続いているわけだ。
1-1で引き分けた8日の広島戦後、井上一樹監督が嘆いた。
「投手があれだけ粘ってくれた。向こうの先発投手も映像を見たりして研究しているけど、もう少し崩しておければな~という試合でした」
井上監督は3番でスタートした細川成也を6番に下げるなど、厳しい一面も見せているが、石川の打順変更に関しては語ったことがない。チームのため、そして石川を大きく育てるために「今はガマンの時」と考えているのだろう。 「ここで石川の打順を下げたら、ここまで苦労してきたことが全て無駄になってしまいます」(前出・名古屋在住記者)
井上監督や松中信彦打撃コーチは、試合前に付きっきりで石川を教えている。しかし今年も打てないとなれば、最下位脱出は厳しくなる。気の早い話ではあるが、中日は来季、球団創設90周年を迎える。まさかメモリアルイヤーの目標が「最下位脱出」なんてことになったら…。
石川には4番が似合う選手になってもらいたい。本人も頑張っている。4番として結果を出すまでの「待つ」は希望だが、やはり辛い時間でもある。竜党も「今はガマンの時」と捉えているのだろうが…。
(飯山満/スポーツライター)