自民党東京都連(会長・井上信治元万博相)が、NPO法人代表理事の渡部カンコロンゴ清花氏を夏の参院選の東京選挙区(改選数6)に擁立する方向で調整したが、これに党内からは公然と、反対の声が上がった。「誰が呼んできたのか」と「犯人探し」も行われている。主導的に動いた人物として浮上しているのは、石破茂首相の側近だ。
渡部氏はかつて2014年2月に、SNSに次のような投稿をし、自民党批判を繰り返していた。
〈「バカに権力を与えるとどうなるか」という見本が今の安倍政権〉
にもかかわらず、都連は参院選への擁立で調整したのだ。
これに慌てたのが、参院選の候補者たちだ。有村治子元女性活躍担当相は、
「私たちの多くが今もなお、誇りに想い、敬意を抱く安倍元総理を公然と侮辱する人を公認候補にするほど、自民党は落ちぶれていませんし、保守の矜持を捨ててはいないはずです」
そう批判して公認に反対した。その渡部氏は4月16日に、インターネットの投稿プラットフォームnoteを更新。
〈最終選考に臨みましたが、公認には至りませんでした〉
どうやら都連幹部たちは、党内からの反発の強さにおじけづいたようである。
問題は都連幹部たちがこうした渡部氏の過去の言動を知りながら、公認に動いたという事実だ。自民党都連関係者によると、平将明デジタル担当相が熱心だったという。
平氏は「安倍一強」の時も石破氏を支持し続け、石破政権で閣僚になった。自民党内でもリベラル派で知られる平氏は、難民申請者らと企業のマッチングを支援するNPO法人を設立した渡部氏を推しても、なんらおかしくはない。
当の平氏は沈黙を保っているが、今回の渡部氏擁立劇は、ただでさえ6月の都議選、7月の参院選の劣勢が伝えられる自民党に、さらなるダメージを与えたといえるだろう。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)