巨人が4月15日のDeNA戦に1-0で辛勝したが、驚いたのは大幅に入れ替えた打順だ。阿部慎之助監督は、1961年の藤尾茂以来64年ぶりとなる「2番・捕手」を編成した。
その2番に起用された甲斐拓也の出塁率は3割8分2厘で、1番には出場試合数こそ多くないが、同じく5割の泉口友汰を抜擢。出塁率の高い打者を上位に置いて、クリーンアップに繋ぐ作戦が功を奏した。
試合後の阿部監督が共同インタビューで語ったコメントが興味深い。
「皆さんからも指摘頂いてるんで、やってみました」
この「皆さん」とは誰なのか。ウルサ型のOBか、それともプロ野球のニュースでコメントを出した解説者か。関係者の話を総合すると、「黒幕」はなんと、巨人ファンのようなのである。
「SNSや巨人関連のニュースを扱うサイトに、出塁率の高い選手を上位に置く打順が提案されていたようです」(球界関係者)
ファンの書き込みだけが理由ではないと思うが、阿部監督がSNSに目を通していたのは意外だった。監督にはニュース番組の野球情報を含めて「見ない」と決めているタイプもいれば、目を通すが「好き勝手なことを言って…」と批判的に捉える人もいる。見ていても「知らない」とトボケる監督もいるそうだ。
どれが正しい対応なのかは分からないが、阿部監督は「外野の声」に耳を傾け、熟考するタイプのようである。
「この起用が裏目に出て大敗したら、誰のせいになるんですかね。決断した現場の指揮官でしょう。だからOBや解説者の助言に耳を傾けない監督が多いんです」(前出・球界関係者)
仮にこの日の一戦を落としていたとしても「1番・泉口、2番・甲斐を助言をした外部のせいだ」とは、口が裂けても言えなかったはずだ。ビジネスマンの世界でも「意見を聞き入れる素直さが大切」と言われている。しかし、それで失敗した時の責任は、提言した側にはない。相手の意見を聞き入れることにも、勇気が必要なのだ。
決勝点は甲斐のバットから生まれた。「監督・阿部」の度胸を知らしめた一戦だった。
(飯山満/スポーツライター)