六代目山口組の分裂抗争は約9年半の歳月を経て、意外な終局を見せている。この間、組織を割って出た神戸山口組は四分五裂し、勢力数で六代目山口組が圧倒する状況となっていた。そして4月7日、ついに六代目山口組が「抗争終結宣言」を出したのだ。
兵庫県警本部を六代目山口組最高幹部が訪れ、文書を提出。そこには六代目山口組が絶縁処分にした神戸山口組・井上邦雄組長、池田組・池田孝志組長、二代目宅見組・入江禎組長らを名指しして「今後は手出しをしない」と宣誓する文言が記されていたという。
暴力団の抗争といえば、相手を殲滅するまでやり合うか、他組織の仲裁によって和解して終わるのが一般的だが、今回はそのどちらでもない。いわば、六代目山口組が一方的に抗争に終止符を打ったことになる。だが、暴力団事情に詳しいジャーナリストによれば、
「全国の暴力団が動き、複数の組織が連名で『抗争を早期終結してほしい』という要望書を六代目山口組に提出したのです。この要望を受けて、六代目山口組は抗争を終わらせるしかなくなった。とはいえ、分裂抗争を10年近く続けたことで、六代目山口組が停滞期にあったことは事実です。しかも抗争といっても、敵方から攻撃を仕掛けてくることはほとんどなくなっている状態で、これ以上、組を割って出ていった連中にかまっていられない、というのが本音でしょう」
つまり敵の殲滅よりも、組織の世代交代を優先したことになるが、六代目山口組には新たな問題が浮上している。「抗争終結宣言」から数日後、暴力団界隈でSNSを通じて、六代目山口組にまつわる「怪文書」が出回り始めたのだ。前出のジャーナリストが解説する。
「組織の舵取り役であるナンバー2の役職、若頭の次期人事をめぐって、六代目山口組の『司忍組長と髙山清司若頭との間で意見が対立している』という内容でした。司組長は山一抗争で大きな戦果を挙げた安東美樹若頭補佐(二代目竹中組組長)を推し、髙山若頭は自身の後継である竹内照明若頭補佐(三代目弘道会会長)を推しているというのです。暴力団組織において若頭の席に座ることは、次の組長になるための必須条件と言っていいだけに、業界では大いに注目されているわけです」
なんとも気の早い話のように聞こえるが、司組長・髙山若頭の六代目体制が発足してから20年が経過していることを考えれば、次の組長は誰になるのかと噂されるのも無理はない。
ところがこれを「火のない所に煙が立っている」と断じるのが、山口組に近い組織関係者だ。
「とんでもない話だ。特に親分とカシラが対立しているなんてことは、絶対にありえない。『抗争終結宣言』に親分が納得しておらず『完全解決ではない』と言っている、などとも書かれているが、逆に親分の許諾なしに、あんな重要なことを決断できるわけがないだろう。つまり信頼関係は全く揺らいでいない。聞いたところでは、激高した山口組の一部有志が綿密な調査の結果、怪文書の発信元をほぼ突き止めたという話だ。それも六代目山口組内部の人間が行った説が濃厚らしい」
分裂直後にはこうした「怪文書」が多数、出回ったものだが、抗争終結となってもなお、六代目山口組の正念場は続いているようだ。