社会

「朝日新聞」と「プレジデント」で評価は真逆「3週間で不登校解決プログラム」の驚くべき中身

「朝日新聞」と「プレジデント」といえば、教育熱心な親が愛読する媒体だが、ある教育サービスをめぐって、評価が真っ二つに分かれている。

 問題の教育サービスは、株式会社スダチ(東京都渋谷区)が運営する「不登校解決プログラム」で、プレジデントオンラインでは9月に入り、連日「不登校を3週間で解決」すると謳う、同社のプログラムを紹介。記事中で同社の代表が「無理して学校に通わせなくてもいい風潮」を真っ向から否定している。

 これに対し、朝日新聞は9月12日付の有料記事に「『3週間で再登校』業者を紹介 不登校の親に、批判受け中止 板橋区」という見出しをつけて配信。板橋区教育委員会が株式会社スダチの不登校解決プログラムを「斡旋」していたと報じた。

 同紙によれば、板橋区の教育委員会は、区内で特に不登校の児童が多い2つの小学校の保護者に同社のサービスを紹介し、希望すれば無償サポートすると持ちかけた。保護者やNPO団体からの批判を受けて、同委員会ではスダチの紹介事業をすでにやめたという。

 板橋区は下村博文元文科大臣の選挙区だが、区内小学校、中学校で暴力事件が年間120件以上も起きている「荒れた学区」である。昨年、公表された「令和3年度 板橋区 暴力行為、いじめ、不登校の状況に関する調査について」によると、新型コロナ禍の令和3年度、区内の2つの小学校で教師への暴力が23件発生。児童が児童に暴力をふるった事案は、3校で34件も起きた。

 令和3年度の小学校内のイジメ認知件数はなんと「3979件」(イジメを認知したという回答数)。下には下があって、足立区の小学校の同年度イジメ認知件数は「1万1000件」だから、板橋区を「荒れた学区」と評するのは言い過ぎかもしれないが…。

 板橋区の特定の2つの小学校で不登校児童が集中している背景として、年間約4000件の「イジメ」と2校で起きた教員暴力事件が無関係だと考える方が無理がある。

 教育委員会が児童に暴力を振るわれた教員を守らず、4000件のイジメに何の策も講じていないのに、強制わいせつや脅迫、自殺教唆、窃盗、器物損壊などの犯罪名に言い換えられる悪質なイジメや暴力に怯えて小学校に行けなくなった子供を「3週間で学校に連れ戻す」というのだから、子供にとっては絶望と恐怖しかない。

 しかもスダチの不登校解決プログラムは、子供へのカウンセリングではなく、親への支援が中心。今どきのイジメにはクラスメイトの前で下着を脱がされる、性器をもてあそばれる、全裸動画を撮られる…などの性犯罪が含まれる。そんなヒドイめに遭った子供は親を悲しませたくないあまり、イジメられたと親に打ち明けることすら難しく、親は子供に何があったのかわからない。子供の傷を癒やしながら、時間をかけて「学校に行きたくない理由」を傾聴しない児童支援などありえない。性犯罪で自尊心と自己肯定感を激しく傷つけられた子供が、真実を話さぬまま自死するおそれもある。

 スダチの前身は2020年に開校した通信制サポート校「逸高等学院」(神奈川県川崎市)だというが、不登校に悩む本人と親は、この名前に覚えがあるだろう。「逸高等学院」の設立者でスダチ代表の小川涼太郎氏は同校設立当時、SNS上で「起立性調節障害は甘え」という主旨の暴言を吐いて大炎上。同校の入学希望者は結局、ひとりも集まらなかったという「前科」があるのだ。

 なおSNSでは、医師が小川氏の発言を即、全面否定。起立性調節障害には運動療養や低血圧治療、貧血治療のほか鉄分や亜鉛の補充療法がある。

 教育委員会は地元選出の大臣経験者の顔色を伺い、業者とズブズブ。イジメを止める現場の教師が暴力をふるわれても、教育委員会と校長は自己保身に終始。加害児童とモンスター親は人権で守られる…。

 この春まで幼稚園、保育園に通っていた子供が、そんな歪んだ社会の縮図、荒れた学校に怯える方がマトモな感性、知性ではないのだろうか。

(那須優子)

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