3月末に永田町に出回った「電撃解散」説。岸田文雄首相のウクライナ訪問、日韓首脳会談などにより内閣支持率が上向きに転じた勢いで、衆参5補欠選挙と同時に総選挙を仕掛けようというものだ。結果的には実現しなかったものの、5月の先進7カ国首脳会議(広島サミット)後の通常国会会期末解散説が、永田町では残っている。電撃解散説の「ネタ元」となったのは、ある「怪文書」だった。
〈岸田首相は予算関連法案が仕上がる(3月)31日に衆院を解散して大勝し、選挙後に内閣改造し、高市早苗(経済安全保障担当相)を切るつもりのようだ。統一地方選ダブルなら野党は確実に分断できる〉
こんな書き出して始まる怪文書のタイトルは「永田町妄想日記」。〈連立を組む公明党にも一切知らせず、おそらく官房長官もまだ知らない〉と書くあたり、文字通り「妄想」の塊ではある。むしろ、永田町・霞が関で注目されているのは、
〈3月から、宮内庁に連絡して陛下の日程調整にあたる役割が従来の官房長官から、官房長官と3人の官房副長官の輪番制に変更になり、今月は木原誠二副長官が岸田首相の意向を聞いて陛下の日程を押さえている〉
とのくだりだ。官邸内の事情にも通じているような書きっぷりである。
実際には宮内庁との窓口は事務の官房副長官である栗生俊一氏で変わりはなく、これは「誤報」である。ただ、いかにももっともらしい怪文書ではある。ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「サンデー毎日」で、解散説を拡散している「震源地」について「求心力を高めるために、「岸田首相周辺がわざと流している。あるいは、野党が解散封じのために拡散している」とする自民党選対元幹部の話を伝えた。
いずれの可能性もあるが、岸田首相がウクライナ訪問などで自信を深めているのは事実である。安倍晋三元首相が早めの解散に踏み切り、その後の政局の主導権を握り続けたのにならい、岸田首相も会期末解散に踏み切るか。地元広島でのサミット開催で、高揚することは間違いない。解散風はサミット後に再び吹くことが予想される。