今後の岸田内閣と自民党の小渕優子選対委員長の行く末を占う意味で大いに注目された衆院長崎4区と参院徳島・高知の二補選は、自民がかろうじて長崎で勝ち1勝1敗となった。この1勝に官邸周辺はホッとするとともに、いよいよ解散総選挙のタイミングを探りだしたという。ただ、ベテラン自民党議員は表情を曇らせこう明かす。
「今回は1勝はしたものの、辛勝だった。岸田内閣は今後、相当細かい戦略を練ることが求められる。また、これからの解散を含む戦いでは、むしろ『立川ショック』の敗因の分析を真剣にすべき。でなければ次の総選挙はボロ負けの可能性がある」
「立川ショック」とは何なのか。一つは都内の立川市選挙区の都議2人が立川市長選出馬にしたため、その後釜の座を巡り10月15日に行われた都議会議員補選だ。都民ファーストの会、立憲民主党、自民党で争われ、小池百合子都知事が「ナマ百合子です」とジョークも交え3度も応援に入った結果、都民ファーストと立民が勝ち、自民党は議席を失ったのだ。
「それ以上にショックなのは9月の立川市長選。ここでも自民は元都議会幹部を務めた候補を擁立したが敗れた」(前出・自民党ベテラン議員)
加えて新たなショックも起きた。10月22日に投開票された埼玉県所沢市長選挙での、今度は「所沢ショック」だ。そこでは無所属新人で元衆院議員の小野塚勝俊氏が、自公推薦で4選を目指した現職の藤本正人氏を破り初当選を果たしている。選挙アナリストが言う。
「しかも立川市も所沢でも、兵庫県明石市の泉房穂前市長の応援が入っての無所属新人の勝利だったという。自民党にとっては泉氏の動きが何とも不気味でしょう」
つまり自民は、ここのところ首都圏などでの大きな都市部での首長選で次々と敗北しているのだ。自民党都議会議員が言う。
「しかも立川では市長選、都議選と敗れたが、自民党都連の会長は萩生田光一政調会長。そこで次々と主要選挙で負けるということは、自民党、岸田政権への風当たりが相当厳しい証拠ですよ」
自民党にとって長崎4区補選での勝利は決して手放しで喜べないのだ。岸田政権に暗雲が迫っている。
(田村建光)