日本全国でクマによる被害が激増している。北海道はヒグマ、本州以南はツキノワグマによる被害だが、市街地や住宅地でも連日のように人的被害が発生するなど、状況は過去最悪の様相を呈している。
そんな中、これまで「ツキノワグマは棲息していない」とされてきた伊豆半島で10月20日、オスの個体がワナにかかっているのが発見され、地元で衝撃が走っている。場所は河津町にある二本杉峠付近。同町の森林業関係者は、次のように不安を口にする。
「伊豆半島では2021年に西伊豆町の山中で約100年ぶりにツキノワグマがワナにかかっているのが発見されましたが、この時は単体の迷いグマがたまたまワナにかかったのだろう、ということで落着しました。ところが今年に入って、中央部の伊豆市や南端の南伊豆町でもクマの目撃情報が相次いだことから、地元では『富士山麓に棲息しているクマが箱根を越えて、伊豆半島に流入しているのではないか』と心配していました。そして、今回の河津町での騒動です。今後、人里での人的被害が出なければいいのですが…」
同様の懸念は、これまで「棲息空白域」とされてきた房総半島や紀伊半島、四国や九州にも広がりつつある。ツキノワグマの消長に詳しい動物生態学者が指摘する。
「絶滅危惧種と言われてきたツキノワグマの個体数は近年、本州以南のあらゆる地域で激増の一途を辿っています。北海道のヒグマも含め、日本全国でクマ被害が相次いでいる最大の理由も、ここにあります。この点は、ツキノワグマが絶滅したとされてきた房総半島や紀伊半島、四国や九州も例外ではありません。これらの地域でツキノワグマによる人的被害が発生するのも、時間の問題と言っていいでしょう」
まさに日本列島クマだらけ。安全な場所はどこにもないということだ。
(石森巌)