この4月に各局の番組編成が大きく変わり、名物ドラマ枠がひとつ終了した。フジテレビの「火9」である。この火曜21時枠は、「古畑任三郎」や「踊る大捜査線」など人気ドラマの放送枠として定着。実に19年間にわたって、様々なドラマを世に送り出してきた。
だがその「火9」は、この1年ほど低空飛行を続けてきた。人気俳優の佐藤健が主演を務めた「ビター・ブラッド」こそなんとか平均視聴率10.8%と2ケタ台を死守したものの、他の作品は連ドラとしては赤点と言えるひと桁代を連発。なかでも目も当てられなかったのが、昨年7月期に放送された「あすなろ三三七拍子」だ。テレビ誌のライターが解説する。
「あすなろ三三七拍子は初回放送がいきなり7.7%と低調で、しかも終わってみればこの回が最高視聴率だったんです。第7話で3.6%を記録した時は『深夜番組にすら負けた』と、逆の意味で話題になりました。当時は、主演・柳葉敏郎の時代も終わったと言われましたが、低視聴率の原因は柳葉さんではなく、視聴者を見誤った制作側の責任ではないでしょうか」
同ドラマの放送中には、各方面からフジテレビ批判の声も聞かれた。異例だったのが、エイベックスが各マスコミに送ったニュースリリースだ。なんと、ドラマの低視聴率を話題にしたり、さらにはフジテレビへの批判まで展開されていたのだ。週刊誌のライターが当時の驚きを振り返る。
「芸能事務所からはよく、所属タレントが出演しているドラマを宣伝するニュースリリースが送られてきます。『あすなろ三三七拍子』にはエイベックス所属の人気モデルが出演していたのですが、そのエイベックスから『低視聴率は、フジの怠慢?』というタイトルのリリースが来たのにはさすがにビックリしました。第2話が5.1%と低調だった直後の話ですが、テレビ局を批判するようなリリースを見たのは後にも先にもこれが初めてです」
このリリースには、フジテレビが他のドラマばかり宣伝しているとか、キャストや主題歌の質が高いのに視聴率が落ち込むのはおかしいなどと、恨み節がズラリ。さらにはフジテレビのことを「今は無様に落ち込んでいる」とか、「視聴者に嫌悪感を持たれているとさえ言える」など、遠慮なしに批判する文言が並んでいたのである。
これほど異例な内容ゆえ、エイベックスとフジテレビが手を組んだ話題作りだった可能性も考えられなくはない。だが、同ドラマの失敗という現実の前には、芸能事務所とテレビ局の不仲ばかりが目についてしまったこともまた否定できないだろう。
そんな「火9」枠の後番組は、後藤輝基と木村佳乃がMCを務めるバラエティ番組の「発見!なるほどレストラン」。まずは初回放送の視聴利が7.7%を上回るかどうかに注目したい。