住之江区で街頭演説をしていた大阪維新の会・片山一歩市議に話を聞いた。
「デマが多く流れて困惑しています。都構想が実現したら税金や介護保険料が上がるとか。賛成なら投票は不要だという虚偽の電話が市民にかかっています」
一方、5月5日に地方自治や都市計画を専門とする学者が開いた「反対」会見に参加した帝塚山学院大学の薬師院仁志教授はこう主張する。
「市長の言い分は欠点ばかり。最近になって二重行政の弊害として、90年代に大阪府が建てた『りんくうゲートタワー』と大阪市が建てた『ワールドトレードセンター』が破綻した例をあげています。これは行政の失敗ではありません。当時、経営に関わっていた第3セクターの社長が、バブル期の計画で過大投資したのが最大の原因だと認めている。印象操作で市民を賛成に誘導しているのです」
ゴールデンウイーク最終日の夜、大阪市中央区のホテル「シティプラザ大阪」で開かれた住民向けの説明会に、市内遊説をしていた橋下市長が急きょ、参加することになった。
会場の受付に行くと、参加者は名前と住所を明記。金属探知機で不審物のチェックまで行われ、ものものしい雰囲気が漂う。参加者は高齢者が中心で、約200席並べられたイスは、7割ほどが埋まった。
説明会では、まず招待された東京都中野区の田中大輔区長が都構想の評価すべきポイントなどを力説。そのあとの討論会で、田中氏の話について感想を求められた橋下氏はこう語った。
「東京の特別区長の話を聞いていただくと、(反対派が)大阪市が特別区になったら何もできなくなることが、まったくのウソだということがはっきりした」
ひとりひとりの顔を見るように話すと、聴衆は大きくうなずき、耳を傾ける。4月14日に浪速区で開かれた説明会ではヤジが飛ぶ場面もあったが、この日は一切なし。それに気をよくしたのか、説明会の最後に、
「世田谷区長が今度、反対派に呼ばれて、大阪都構想はとんでもないと。大阪都構想は東京都政よりも進化しているってことを、彼は知りませんから。世田谷区長は東京都政大嫌いなんですね。だから反対派の会合では『都』がつくものはダメだと言います」
と、なぜか世田谷区長を攻撃ターゲットにして、会場の笑いを誘うのだった。
密着中、橋下氏が1日だけ市民の前から姿を消した。政治部記者が話す。
「橋下市長と松井幹事長が永田町に出向き、菅官房長官のもとを訪れて、都構想が賛成多数で勝ったあとの相談をしたそうです」
住民投票で負ければ政界から身を引く意向を示す橋下氏。大阪市民211万人の有権者の決断やいかに。