首都圏脱出もままならない
では、首都直下の大地震が発生すると、被害はどうなるのだろうか。
05年の中央防災会議のレポートによると、東京湾北部M7・3の大地震の発生で「死者1万1000人、負傷者数21万人、帰宅困難者650万人、建物倒壊消失85万棟、避難者700万人」という身も凍るような試算が出ている。
防災に詳しいジャーナリストの村上和巳氏がこう語る。
「例えば1メートルから2メートルの地盤のズレが生じると、東京湾を走るアクアラインは橋脚の前後で沈下したり隆起するという事態が発生しうる。道路に段差ができ、通行不能になり、走行中の車が事故を起こすでしょう。千葉の人が神奈川に避難しようと思ってもアクアラインは使用できなくなり、迂回する人で市川市周辺は大渋滞になる。ベイブリッジやレインボーブリッジ、首都高の被害も甚大です」
また、東日本大震災でも問題になった地盤の液状化が懸念される。
「地震発生で鉄道各社はすぐに運行を止めるでしょうが、緩い地盤が沿線に多い常磐線などは危険な鉄路です。首都高は荒川方面に走るエリアが危ない。羽田空港も使えなくなっているでしょう」(前出・村上氏) まさに、交通パニックだ。
道路の寸断によって消防車も走れなくなる可能性がある。倒壊に加え、火災の発生により、多くの建物が焼失することが予想されている。木造住宅が密集している墨田、荒川、江戸川、江東、そして杉並、中野、世田谷が危ないのだ。
杉並区では住宅に通じる道が複雑で狭く消防車が入れないことも考えられる。
関東大震災では火災から逃れるため本所の公園に集まった住民が4万人も亡くなった悲劇の歴史がある。
「四方を木造住宅に囲まれた場所は火災が迫ってくると、真ん中に“火災旋風”と言われる熱風が吹き上げ、被害を大きくするのです」(前出・村上氏)
京浜・京葉の石油化学コンビナートなど危険物が立ち並ぶ東京湾沿岸は火災が起こると延焼も考えられる。もし、冬の北風にあおられれば、東京湾が火の海になることも。
「日本には石油の備蓄は数十日分ありますが、工場が火災で焼ければ製品が出荷できなくなる。石油製品は払底し、価格が上昇します」(前出・村上氏)
東日本大震災後にガソリンの入手に四苦八苦した悪夢の記憶がよみがえる。当然、生活インフラも大打撃を受けているだろう。
「都市直下型の阪神淡路大震災では、電気、ガス、水道は即座にストップし、ガスで復旧に最大2カ月を要しました。市民生活は困難を極め、発生後数日から十数日は食料・飲料水の調達さえままならない地域も出てくるでしょう」(前出・村上氏)
多くの市民が避難を試みるだろうが、ガソリンも手に入らず、交通インフラもズタズタでは、首都圏脱出さえできないかもしれないのだ。
さあ、あなたはその時どうする!
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