重たい扉を開け、闇に包まれたシートに身を沈める。誰にも、何事にも邪魔されない空間で、スクリーンの彼女だけを追いかけた。それを恋と呼ばず、何と呼べばいいのか──。アイドル女優が「最も輝いた瞬間」を徹底討論!
トップバッターは32歳となった今も10代の頃と変わらぬ美貌を保ち続けている深田恭子だ。
ドラマでも映画でも、どこか現実離れしたキャラクターの作り方はピカイチであるが、路線を決定づけたのが「下妻物語」(04年、東宝)ということになる。土屋アンナ扮するヤンキーに対し、フカキョンはゴスロリ少女の役だった。映画パーソナリティのコトブキツカサ氏が言う。
「実は当初、深田がヤンキーの役という設定だったんです。結局、実現しなかったおかげで、深田の魅力を最大限に生かすことができました」
残念ながら近年、ラブシーンの場面は映画・ドラマともに多いが、観客を納得させるだけの本気度は見せていない。課題は“大人の階段”なのかもしれない。
続いては、6月13日に公開された「海街diary」(東宝)で四姉妹の次女役を演じている長澤まさみ。カンヌでのレッドカーペットでは共演した綾瀬はるかをも圧倒する妖艶ボディを見せつけたが、さて、きらめきの一本となると?
「初主演作の『ロボコン』(03年、東宝)でしょうね。撮影当時は中学生でしたが、スタッフが『宇宙人かと思うくらいの美少女だ!』と絶賛していました。身長も高かったし、セクシーではないがビジュアルの完成度は必見でした」(美少女研究家・高倉文紀氏)
90年代後半にピュア系美少女ブームのトップランナーだった広末涼子は、映画だけで30本近い出演本数を誇る。さあ、その中でベストワンを選ぶなら?
「やはり主演デビュー作の『二十世紀ノスタルジア』(97年、大映)でしょう。ここからすべてが始まったと言ってもおかしくない。デビュー当時に言われていた“吉永小百合の再来”という評価も、あながち過大ではなかった」(前出・コトブキ氏)
その魅力は演技力うんぬんというより、やはり「透明感」につきるようだ。
では大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」(11年)のヒロインも経験した上野樹里はどうだろう。いや、迷うことなく初主演作の「スウィングガールズ」(04年、東宝)に一極集中。
「あの映画における旬の感じは圧倒的。今でこそ広瀬すずなどショートカットの女優は多いが、その先駆者的な役割もありました。当時は無名に近かったが、主演に抜擢され、明るいキャラクターが抜群にハマった。さらに映画も大ヒットと、文句のつけようがない」(前出・高倉氏)
この傑作の翌年に公開されたのが「パッチギ!」(05年、シネカノン)である。ここでヒロインのリ・キョンジャを演じた沢尻エリカは、数々の映画祭で新人賞に輝いた。
「井筒和幸監督も、キョンジャ役のオーディションではダントツだったと話しています。いや、沢尻はすでに受かる前提で監督と話していたそうですから」(前出・コトブキ氏)
チマチョゴリを着たキョンジャの愛らしさは、後にスキャンダルまみれになる沢尻にとって「いつか戻っていく場所」だったのではないか‥‥。
さてAKB48を卒業後は女優まっしぐらを宣言している前田敦子。ただひたすらグータラと寝ている「もらとりあむタマ子」(13年、ビターズ・エンド)は、そんな設定にもかかわらず、意外に評価が高い。
「その前の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』(11年、東宝)は、純然たるアイドル映画。ところが『タマ子』はアイドルの輝きを引き出す映画ではないんですよ。ところが、エンドロールになって初めて、居眠りしている姿をドキュメント風にとらえて、テヘッと笑う前田の姿。映画がこの場面のための前振りなんじゃないかと思うくらいキュートでした」(前出・コトブキ氏)
最後は実力派の評価も高まってきた榮倉奈々だ。コトブキ氏が選んだのは、主演作の「アントキノイノチ」(11年、松竹)である。そこには、こんなエピソードが存在する。
「撮影カメラマンの鍋島純裕さんから、ホテルのシーンで、吸い寄せられそうになったと言っていました。カメラをズームするのが怖かったともおっしゃってましたね。もしかしたら榮倉が、壊れてしまうんじゃないかと思ったほどで、もはやアイドルではなく、女優に脱皮したんでしょうね」(前出・コトブキ氏)
ここ数年、魔性の女優がなかなか誕生していないだけに、一番手となれるかもしれない。