その美貌、アクション‥‥。時に主役刑事より視聴者の胸に刻まれる美しき女刑事たちの記憶。映画評論家・秋本鉄次氏、映画監督・杉作J太郎氏、ライター・藤木TDC氏という3人の通が、“我が青春の女デカ”を推しまくる。
秋本 70年代の女刑事は、マスコット的な存在でしたよね。「太陽にほえろ!」(72~86年、日本テレビ系)の関根恵子がそうでした。
藤木 最初はお茶くみ要員で、最後のほうでようやく警察業務に関わるようになって。松田優作演じるジーパンと恋仲になったのは、がっかりしたなあ。彼女は「おさな妻」や「高校生ブルース」など大映の映画で脱いだ過去がある。その世代の男にとっては“エロの人”であったけど、「太陽──」では清純派女優として生まれ変わり、新たなファンを獲得していました。
杉作 でもやはり、女刑事はかわいいだけでは務まりません。人質要員や、捜査の足手まといでは困ります。男と対等、それ以上に強くないと。そういう意味では、「Gメン’75」(75~82年、TBS系)の夏木マリや江波杏子は頼りになる刑事だった。夏木さんには一度お会いしたことがありますが、男より男らしかったです。
藤木 ドレッシーな服を着てアクションをキメて、かっこよかったですよね。
杉作 アクションといえば「燃える捜査網」(75~76年、テレビ朝日系)の志穂美悦子ですよ! 婦警さんの格好をして、ほっぺが赤くて、佐藤蛾次郎とコンビだからよりいっそうかわいらしく見えました。本格アクションをこなしつつ、アイドルらしいかわいらしさがたまらなかった。
清廉潔白なかわいさがハマっていたのが「華麗なる刑事」(77年、フジテレビ系)の檀ふみ。クセのある草刈正雄と田中邦衛コンビを厳しく叱りつける姿は、初々しくて可憐だった。
藤木 僕がいちばん好きなのは「大激闘マッドポリス’80」(80年、日テレ系)の堀川まゆみです。存在そのものがエロかった! 渡瀬恒彦や梅宮辰夫、志賀勝らコワモテ俳優の中に堀川がいると、絶対に“ナニか”があると思うじゃないですか。ある時、悪役に縛られて、ドキドキしながら見守っていると、それ以上はナニもなく。「次週こそ!」と期待が高まるも、結局、全編通してパンチラもしなかったけど。そうやって期待をさせるのが彼女の魅力でした。
杉作 僕も堀川、よかったです。マツダのスポーツカー・RX-7をテクニカルに乗り回して銃を撃つなんて、日本の刑事ドラマの女性では珍しいタイプ。その頃からですね、女刑事の業務がお茶くみや、交通取締りだけなのがナンセンスになってきたのは。
藤木 「あぶない刑事」(86~87年、日テレ系)の頃になると、男と同等に主張して活躍する。パンチラキックも、無意味に犯人に縛られることもなくなりました。
秋本 「あぶ刑事」の浅野温子は舘ひろしと柴田恭兵の間で茶々を入れたり、新人刑事の仲村トオルをからかったり、事件に関わって足手まといになったり、コミカルで元気に魅力的に動くムードメーカーでした。
藤木 それまでの“男性視聴者サービスの起用”とは一線を画しますよね。
秋本 そうですね。以降、女刑事が主役のドラマも主流になり、2時間ドラマにはけっこういいのがありますよ。特に「お礼は見てのお帰り ナニワのべっぴん刑事」(97~99年、フジ系)の鈴木京香はかっこいいです。男勝りにバリバリの大阪弁を張り上げて、ミニスカ姿で脚を蹴り上げる。魅力的ですね。
最近のオススメは「刑事夫婦」(14~17年、TBS系)の鈴木砂羽。威勢がよい姉さん女房というキャラがドンピシャ。石黒賢演じる夫の尻を叩くのを見て、僕も叩かれたい、なんて(笑)。
杉作 そうそう、刑事以外にも見どころがあって、例えば主人公の妹役。女刑事のようなハードさを要求されない分、ただただかわいらしい。「大都会」(76年、日テレ系)では仁科亜季子が、「西部警察」(79~82年、テレ朝系)では古手川祐子が、むさくるしい男社会の華となる。渡哲也演じる兄貴の下着を交換するため警察署にやってきたり、毎回、楽しませてくれるんですよ!
── では「最強の女デカ」ですが、アサ芸的には堀川まゆみの色香ということで。
一同 異議なし!