オールスター戦を終え、いよいよペナントレースの覇権争いは激化する。上位・下位の差がくっきりと表れたパ・リーグに、ダンゴ状態で全球団にCS進出のチャンスが生まれているセ・リーグ──。過酷なサバイバルのベンチ裏では、さまざまな駆け引きが繰り広げられている‥‥。
パ・リーグは首位・ソフトバンクに食らいつく、2位・日本ハム(7月15日現在、以下同)が虎視眈々と逆転を狙っているようだ。
10勝1敗、防御率1.43という驚異的成績を誇るエース・大谷翔平(21)の存在がチームに勢いを与えている。
「無敵状態ですからね。顔の表情で球種がバレてしまうクセも出るのですが、西武の中村剛也(31)が待っていたストレートをしとめられないレベルになっている。大谷クラスのピッチャーが他球団にはいないため、投げれば勝ちを計算できます。絶対的エースを持つ日本ハムは、吉川光夫(27)、メンドーサ(31)も計算が立つようになったので、短期決戦は強いでしょう。2位以下でもCSまで進めば、3投手で勝ち抜く力は十分にある」(パ・リーグ関係者)
もちろん、日本ハムはCS狙いなどではなくシーズン制覇を目指しているが、立ちふさがるのが50勝一番乗りで独走する、昨年度の覇者・ソフトバンクである。
プロ野球評論家の伊原春樹氏もこう話す。
「投げれば勝つ大谷がいるのは大きいですが、順当にいけば、やはり投手の数が豊富なソフトバンクが優位でしょうね」
ソフトバンクは王者の風格漂う野球を実践している。今年就任した工藤公康監督(52)は「相手の嫌がる野球をやるんだ。相手に対戦したくないと思わせたい」と意気込みを語っていたが、3番から6番まで柳田悠岐(26)、内川聖一(32)、李大浩(33)、松田宣浩(32)と並ぶ不動のオーダーはまさにその象徴だ。
だが一方で、コマがそろっているはずの投手陣に不安材料が生まれていた。確かに、武田翔太(22)、スタンリッジ(36)、中田賢一(33)、大隣憲司(30)などなど、豊富な先発陣は他球団を圧倒しているように見える。ところが、エース・攝津正(33)が防御率4.10と大不振に陥り、6月から二軍調整を続けてきた。
「パには破壊力抜群のバッターがそろっているため、点の取り合いが多くなりがちですが、エース対決となった際には、例えば日ハム・大谷やオリックスのディクソン(30)などが出てくるとロースコアのゲームになる。しかし、ソフトはエースを欠いてしまった。先発陣は防御率がチームトップの武田ですら3.40と低調です。後半戦から攝津が復帰するとはいえ、かつての投球が戻るかは難しいでしょう」(スポーツライター)
そこで救世主として期待されていたのが、元メジャーリーガー・松坂大輔(34)だったのだが‥‥。
球界関係者が明かす。
「松坂は5月に二軍戦での登板を回避して以来、リハビリ計画を立て、右肘や股関節の状態を回復させて後半の7月から復帰する手はずだった。実は首脳陣は、夏場の苦しい時期に松坂が復活することをひそかに計算していたんです。ところが、その後、工藤監督がリハビリ調整を続ける松坂と直接面談したのですが、『右肩に力が入らない状態なんです』と告げられて茫然。松坂はすでに来年に向けた調整に入っています」
思わぬ“松坂ロス”がソフトバンクを襲っているのだ。
となれば、4位ロッテに6ゲーム差をつけてAクラスは確定的、の西武にも首位をうかがうチャンスはあるか。
「7月10日から日本ハムに3タテを食らわされて一歩後退したようですが、チームの雰囲気は悪くない。昨年を最下位に近い5位で終え、今季Aクラス復帰なら田邊徳雄監督(49)の続投も決定的です。そもそも田邊監督は、17年に潮崎哲也二軍監督(46)を昇格させる際の土台作りを任されていますからね。その余裕がリーグダントツの90本塁打を量産している打線をさらに活気づけるかもしれません」(スポーツ紙デスク)
下位3球団の上位進出は正直厳しい様相を呈している。もはや心配は別のところにあるようだ。
「ロッテは国際大会出場のためデスパイネ(29)がチームを離れているのが痛いですが、実はカナダで行われている大会にはメジャーのスカウトも大挙して押し寄せている。球団はメジャー志向もあるデスパイネに、よけいな接触がないよう祈っています。楽天が不安視しているのは、守護神・松井裕樹(19)の登板過多。Aクラスが遠のく中、投げすぎで来季まで棒に振る展開は避けたいですからね」(前出・スポーツ紙デスク)
※文中のデータは2015年7月15日時点