「安全です」と連呼しておきながら、東京電力は福島第一原発を爆発させ、大惨事をもたらした。被災者の生活を奪い、日本中に放射能の恐怖を植え付けた元凶。東電社員はこの1年、経営幹部の言い逃れやデータ隠し、ヒドイ事故対応などで、袋叩き状態だった。
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東電社員――。彼らに付きまとったのは、その「身分」を知られる不安だった。ある女性社員がつぶやく。
「とにかく、書類に勤務先を書くのが嫌でした。病院、カード類を作る時、各種手続きで‥‥」
原発事故によって彼ら東電社員は、当たり前だが、世間からの大バッシングという暴風雨に見舞われた。その対策として、ある「指示」がなされたという。本店に勤務する事務方の男性中堅社員が苦笑して言う。
「『居酒屋など、外に飲みに行くのを控えること』というお達しが回ってきたんです。同僚と飲みに行って仕事の話をしてしまうと、内容から東電社員だと店や周囲の客にバレてしまう。『こんな時に酒なんか飲んでる場合か!』と批判されかねません。だから、1人でコッソリと行ける店でだけ飲むようになりました。今もその状態は続いています。自分たちのことを知られている店にはもちろん行かなくなりました」
禁を破って、ごくたまに親しい同僚と食事する際も、
「ラーメン屋でメシを食いながら、ビールか焼酎を1杯飲んで、サッと帰ってくる。その際も意識して、趣味の話ぐらいしかしない」(中堅社員)
その背景にあったのは、
「複数の社宅や支店にいたずらや嫌がらせ、落書きがありました」(女性社員)
仕事現場でも、彼らの肩身はすこぶる狭い。営業系の部署にいる若手社員は嘆息するのだ。
「法人の顧客と接する部署はもう大変。『他の会社に切り換えるぞ!』と罵倒されて帰ってくる人もたくさんいましたから。新聞や雑誌、テレビでさまざまな報道がなされましたが、どこまで本当なのか、実は僕らもわからなかった。事故状況などについては、会社からメールがありました。『この報道についてはこう書かれていますが、実際はまだ調整中の案件です』とか。顧客にはそんなふうに説明しないといけなかった」
もちろん補償センターでも、謝罪対応に追われる日々。社員は福島県にも派遣されたという。先の女性社員はこう明かす。
「年齢、肩書に関係なく、総務や営業など各部署が入り交じった混成チームを組んで、順番に福島に行かされました。車や民家、土壌の除染などをするのですが、地元の要望によって作業の内容は変わります。あとは、原発事故を処理するための資材を組み立てたり」
被災者への補償金を工面するため、外部業者に委託していた作業は社員が担当し、支出を抑制。
「工事の立ち会いなど、現場仕事が増えました。給料は減りましたが」(若手社員)
補償問題が決着し、原発廃炉、放射能拡散が収まるまで、彼らの受難は続く。
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