発生から1年で死者、行方不明者合わせ1万9000人強に達している大震災。しかし、この数字の中に、かなりの数の“生存者”が含まれているとしたら――。震災に乗じた「裏シノギ」で荒稼ぎするヤクザがテレビ・新聞では決して報じられない戦慄実態を明かした。
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福島第一原発周辺の地域に根を張る「兄弟分」の依頼で、原発事故直後から、現地に作業員を送っている東日本のさる組織の幹部(54)が言う。
「事故当初は1人の日当から10万~30万、月に数千万抜けたので、かなりのシノギになった。だけど被曝線量の管理がけっこう厳しく1人あたり2カ月ちょっとしか送り込めない。1カ月ほど休ませて、また行かせるわけだけど、オレたちが労働者を送る場所はいわば“最前線”。だから、あれが『ぶらぶら病』ってやつかな、帰ってきても一日中ボーッとしていたり使い物にならなくなる」
そこで目をつけたのが、津波などによる「行方不明者の存在」だという。「これは兄弟分が関わっている手口だが」と前置きして、この幹部が続ける。
「漁師などにも多いが、被災3県には、博打や女で借金作っている被災者がけっこういて、中には闇金から多額の借金しているのもいる。借金で首が回らず、震災のドサクサに紛れて逃げたのも多いけど、オレたちは逃げた人間を捕まえるのが商売という面もある。見つけて『型にはめる』んだ。彼らを震災の『行方不明者』や『死者』ということにしてしまうんだ」
「詳しい手口は明かせない」と慎重な口ぶりだが、「ヒントは教えよう」と言って、さらにこんな話をする。
「今回の震災では、警察の捜索記録などの書類がそろわなくても、行方不明者の死亡届が受理されるようになるなど、手続きが簡素化された。原則、死亡届は行方不明者の親族が出すことになっているけど、今回は一家全滅なんてケースがたくさんあるので第三者が死亡届を提出する『方法』はある。そして死んだことになって、いったん闇金からの借金が棒引きされ、追い込みから解放された元多重債務者を、今度は偽名で原発作業員として送り込む。確かに作業員として採用する際には、住民票や健康診断書の提出が必要だけど、あくまでこれらの書類は事前に提出するもの。実際に作業の当日、大勢の作業員が現場に集まった時にいちいち名前と本人を突き合わせるわけじゃない、と言えばわかるだろう」
そして、現場で2カ月半、「山田太郎」として働いたら、今度は「高橋一郎」名で働いてもらうという。
「まったく同じ現場で働くこともあるから、同一人物が別名で働いていることが現場の上長にバレることもある。だけど文句を言われたことはない。ひどい人手不足なんだから暗黙の了解なんじゃないかな。働かされるヤツは放射能を浴びまくって、かわいそうだけどね」
彼らの間ではこのような人間を“ゴースト”と呼んでいるそうで、この幹部に言わせると、その数は延べで2桁ではきかないほどはびこっているという。
「南国で働こう」と巧みに誘い
一方、被災地の夜の盛り場では水商売の女性たちがターゲットになっている。というのも、一時「震災バブル」とまで報じられた東北一の歓楽街、仙台・国分町の状況が一変したのだ。
「ガレキ撤去などの復旧工事が本格化して、昨年の一時期、建設関係者を中心に景気が急上昇。キャバクラでは女のコが足りないほどでした。それが年明け以降、パッタリ客足がとだえ、今じゃ歩いているのは、スカウトばかりなんです」(国分町の某クラブのオーナー)
また震災前はトップクラスの売れっ子ホステスも、生活環境は悪化し、客も減って稼ぎも激減、ここにヤクザが着目したのだという。
被災地周辺地域に拠点を構える、別の某組織系列幹部(41)が話す。
「例えば、家も仕事もなくなったホステスに風俗で働かせて儲ける手もある。だけど客がいないから必然的に東北以外の土地の盛り場に売ることになる。今年の冬は特に寒かったから『南国リゾートで働かないか』と、沖縄や九州のキャバクラに送り込む。女のコにはおいしい話ばかりするから、みんな喜んで行くよ。沖縄あたりじゃ、色白のコが多い東北のコは珍しがられ、また、同情も買って人気だそうです。中には、そうした土地で売れたホステスを同地域の別の店に次々と“転売”し、支度金を何度もせしめる人間もいると聞くよ」
仮設住宅を舞台に被災者を狙った詐欺事件の被害も甚大だという。その手口は模倣されやすいということで詳細は報じられていないが、地元紙記者が明かす。
「最近確認されているのが、簡単に言えば、役所の人間や弁護士、警察官を装い、仮設住宅の住民たちに“調査票”を渡し、資産や預金額などの個人情報を記入させる。そして、『預金がこんなにあると被災者向け給付金を取得しにくくなるから預金の一部をいったん我々に預けてくれ』と言って根こそぎダマし取る。複数による詐欺で、組織的な犯行の可能性も高い」
復興への懸命の努力が続けられる被災地では、生き残りをかけた裏社会の悪質なビジネスも、ますます横行しそうな情勢なのだ。