前年最下位からの下剋上V。ヤクルトに浮上しているのは、優勝しても消えない「身売り」説だ。
新国立競技場の建設もあり、東京都は5年後の東京五輪を境に、神宮周辺の大型都市改造に乗り出す計画を今春、発表している。先に秩父宮ラグビー場を解体して、その跡地に新神宮球場を建設し、22年末までに完成。その完成を待って、現神宮球場を壊して新ラグビー場建設に着工するというものだ。この新神宮球場の建設費を巡って、不穏な話が飛び交っている。
「神宮球場は明治神宮野球場という正式名称があるように、持ち主は宗教法人の明治神宮。建て替え費用の一部は都からも助成されますが、ほとんどを明治神宮が持たねばならない。ヤクルトにも費用の一部協力をお願いしたところ、断られたそうです。そこで『もう球団を売るつもりなのか』との声が出た。代わりに資金提供を持ちかけたのが巨人だとの話もあります。巨人は新国立競技場の五輪後の使用も目論んでいますが、東京ドームの耐用年数が終わりに近づいているので、神宮周辺への移転を狙っている。これもヤクルト身売り説に拍車をかける要因です」(球界関係者)
ヤクルト本社は3期連続での最高益を発表するなど、すこぶる好調だ。海外展開の成功、とりわけ中国、インドネシアなどでの販売網拡大に成功している。だが14年ぶりの優勝を手にしても球団が垂れ流す赤字は一向に減らず、本社内では『アジア展開する会社の方向性において、球団を持つ価値はあるのか』という議論が浮上。10年12月にヤクルトの身売り話がスポーツ紙の1面を飾り、買収先としてIT企業「サイバーエージェント」があがった。結果的に誤報となったが、身売りの検討自体は事実であり、優勝した今もその状況に変わりはないという。
「楽天やDeNAは企業価値をアップさせるために、うまく球団を使いました。球団を欲しいIT企業は少なくありません。優勝したこと、新球場という付加価値がつき高く売れる可能性がある、という点でも、球団売却情報を見過ごすことはできません」(前出・球界関係者)