近年はテレビ離れが叫ばれて久しいが、最終回で42.2%の高視聴率を獲得。さらに「倍返しだ!」が流行語大賞に輝いたのが「半沢直樹」(13年、TBS系)だ。半沢課長の部下役だったモロ師岡(56)が、革命的だった現場を振り返る。
── 東京中央銀行・大阪西支店の角田役のオファーが来た時はいかがでした?
モロ 決まったのはクランクインの3日前で、いきなり台本が5冊あったんですよ。まあ、そんなギリギリで決まったぐらいだから、大したことないだろうと。
── 蓋を開けたら社会現象になる大ヒットで。
モロ よく考えたら、そんなに意識してないものほど人気が高い。映画の「キッズ・リターン」(96年、オフィス北野)もそうだし、「ビューティフルライフ」(00年、TBS系)もそう。
── 「ビューティフル──」は木村拓哉主演だから、前評判も高かったのでは?
モロ もちろん、そうなんですが、彼がカリスマ美容師で、その店の店長が何でオレなんだって(笑)。
── さて「半沢直樹」ですが、従来、経済モノは当たらないと言われていました。
モロ そうですよ、女優さんも多くないし。だけど、わかりやすかったんだと思います。銀行員の悲哀が世のサラリーマンにも共通しただろうし、そして「倍返しだ!」のセリフね。
── 池井戸潤氏の原作にもありますが、回を追うごとに「10倍返し」「100倍返し」と激化。
モロ そういえばウチのカミサン(女優の楠美津香)と夫婦ゲンカすると、よく「やられたら倍返しよ!」と言われていました(笑)。そういう普遍的な言葉だから浸透したんでしょうね。
── さて、人気を爆発させたのが、苦境に陥った半沢が最後に逆転し、タンカを切る場面。特に第3話の「裁量臨店」という銀行特有の検査システムは緊迫感がありました。
モロ 本部の監査セクションから検査役が来ましたね。あるはずの資料を抜き取られていたり、半沢課長が検査役のカバンを調べると風俗情報誌が出てきたり。
── 半沢を中心とした西支店側と、本部の検査チームとの息詰まる場面。撮影はどうだったんですか?
モロ あの場面はつなぎじゃなくて、一気に撮影するんですよ。だから「オレのところでしくじったら台なしだ‥‥」って、素人かと思うくらい緊張して(笑)。そのストレスが脚に来ちゃったくらいですから。
── 神経に支障を来して痛みを感じましたか?
モロ 台本にはなかったけど、机を飛び越えて検査チームのカバンを奪おうと思ったんですよ。だけど、痛くて無理でした。
── 半沢を支える銀行チームと一体化していますね。
モロ エキストラの皆さんも含めて、全員が同じ方向を向いた芝居をしていましたね。ドラマでは珍しいことだと思いました。
── ドラマを牽引したのは、やはり半沢を演じた主演の堺雅人でしたか?
モロ 社交的で、スターぶらない、いい方でしたね。役者として見ても、あの人のセリフのテンポが速すぎず遅すぎず、それに柔らかな声質もあって抜群によかったと思います。
── 続編があれば‥‥。
モロ それはもう、絶対にまた出たいですね!