政治

小沢一郎「来年オレが総理をやるッ」(1)小沢事務所の様子を伺い…

 候補者大乱立の末のドタバタ決着。ようやく退陣した前任者の「次」を選ぶ民主党代表選挙は、数合わせの裏工作が渦巻く古い永田町政治の様相を呈した。その中心で仕切ったのはやはり、党員資格停止処分などものともしない「陰の最高実力者」。その采配の先に見据えるのは、満を持しての「政権掌握」なのだった。

小沢事務所の様子を伺い…
「候補者をまとめて勝利するしかないな」
 何やら自信に満ちた、キーマン然とした言葉。発信の主は誰あろう、民主党・小沢一郎元代表(69)である。引き際、往生際の悪さをこれでもかとさらした末に、ようやく退陣を表明した「史上最悪の総理」に代わる党新代表、すなわち新総理選びに際し、周囲にこう語っていたというのだ。というのも、
「前回の代表選に出馬して敗れるという失態を犯し、みずから率いる小沢グループの議員、そして党内から求心力を失いつつありました。そのマイナスを取り戻し影響力を残すには、勝ち馬に乗ることが必須となる。その見極めの重要性を認識したセリフだと思います」(民主党担当記者)
 代表選の攻防はまさしく、候補者たちの「小沢詣で」に象徴されたと言っても過言ではない。
 政治資金団体「陸山会」を舞台にした、土地購入にまつわる政治資金規正法違反容疑で小沢氏は強制起訴され、秘書も逮捕。10月にみずからの裁判を控え、党員資格停止処分を受けた身であり、党内行事である代表選には立候補も投票もできない。だがそれでも、約120人という党内最大勢力のグループを率いる「最高実力者」の支持なくしては‥‥と各候補者は判断したのである。
 真っ先に小沢氏にスリ寄ったのは、意外にも野田佳彦財務相(54)だった。何しろ小沢氏が反対の意を明確にしている「増税」の意向を早くから打ち出しており、小沢氏とは対立軸にあると思われたからだ。小沢グループに近い民主党幹部が明かす。
「野田氏が小沢氏のもとへ挨拶に訪れたのは、8月中旬でした。挨拶を受けた小沢氏は『野田より先に財務省の役人が来ると思ったが、まず野田が来るとは驚いたな。ハハハハハハ‥‥』と笑ったそうです。これは増税主張など、野田氏が財務省の言いなりになっているため、本人ではなく役人が挨拶に来ると思ったという皮肉ですね。実は野田氏はその後、一足先に出馬会見を開く予定でしたが、外国為替市場で1㌦=75円95銭という戦後最高値の急激な円高を記録。その対策に追われ、会見どころではなくなりました」
 その後も野田氏は8月18日の千葉市内での講演で、「93年の政権交代の推進力となったのは小沢先生。依然として政局の中心におられる稀有な存在だ」
 と不自然なまでに持ち上げたあげく、党員資格停止の解除も示唆。党内から失笑が起きたほどの露骨なアピールだった。
 野田氏が小沢礼賛をした翌19日、議員会館にある小沢事務所に、次なる候補者が「面接」に訪れた。政治ジャーナリスト・安積明子氏が証言する。
「午後4時に入室したのは海江田万里経産相(62)でした。面談時間は16分間。退室した際、海江田氏は口元に笑みを浮かべ、同じ6階にあるみずからの事務所へと戻っていきました」
 そして、さらにもう1人。安積氏が続ける。
「午後5時半、小沢鋭仁氏(57)が入っていきました。19分後に出てきた際には、同じくニコニコとした表情でした。実は小沢鋭氏の面談中、海江田氏が事務所から出てトイレに入ったのですが、行きがてら、体を伸ばすようにして、小沢事務所のほうを見ていたんです。記者たちは『あれはトイレに行く振りをして、実は様子が気になっていたんだよ』と。というのも、2人とも動揺を隠すため、無理して作り笑いをしてたように見えたのです。小沢氏から、期待した言葉をもらえなかったんでしょう。だから海江田氏もウロウロしていたわけですね」
 事実、小沢氏は2人に対し、「頑張りなさい」と言うだけだった。この時点で、小沢氏が態度を決めかねていたのは事実のようで、
「小沢事務所を訪問していた松野頼久氏(50)が『小沢さんの口からは、推したい候補の具体名が出ていない』と話していました」(前出・民主党幹部)

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