日韓首脳会談後は、共同記者会見や共同文書の発表もなかった。
「昼前に会談が終わり、日本の関係者の間では、『サプライズで昼食を用意していたら、韓国を見直すんだけど』と話していました。でも、やっぱり用意されておらず、安倍総理は苦笑いしていました」(総理側近)
元時事通信ソウル特派員で、「悪韓論」(新潮新書)の室谷克実氏は初会談についてこう評価する。
「反日姿勢が相変わらずであることがわかった。今回の会談で朴大統領の支持率が上がっても、当面は大きな外交日程はありません。国内では、大統領が歴史教科書の国定化を進め、反対する世論が盛り上がっています。若年失業者問題など課題が山積みで、支持率は徐々に下がるでしょう」
帰国後、安倍総理は出演したテレビ番組で慰安婦問題について、
「互いに合意すれば、その後はこの問題は再び提議しないということ」
「ここで終わったと思ったけれども、また政権が代わるたびに提議をされることがないように」
と発言。韓国を牽制するのだった。
また、中国同様、韓国も経済で大きな問題に直面している。10月5日、日米が主導となって、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉が大筋合意。参加12カ国のGDP(国内総生産)合計が、世界の40%を占める大型経済圏ができる運びとなった。輸出競争力で日本より劣勢に立たされることに気がついた韓国は、翌日の国会の委員会で、崔ギョン煥(ギョンの字は日の下に火)経済副首相兼企画財政相が、「(TPPに)参加する方向で検討する」と突然言いだしたのだ。前出・室谷氏はこうアキれる。
「実際に参加するとなったら、国内は農水産品や自動車(部品含む)の扱いなどで大揉め状態になります。10月16日にホワイトハウスで開かれた米韓首脳会談で、TPPは議題から外された。米国から本気で参加できると思われていないのでしょう」
この米韓首脳会談では、朴大統領が「板挟み」になっていることも明らかになった。オバマ大統領から中国が国際規範に反する行動を取った場合は、一緒に足並みをそろえるように迫られていたのだ。
「韓国は経済は中国、軍事防衛はアメリカと組む方針です。『南シナ海問題』のように中国とアメリカが対立すると、関係悪化を恐れてどちらにもいい顔をしようとして、結局、黙ってしまうのです」(近藤大介氏)
その結果、3カ国首脳会談でも、「南シナ海問題」について、朴大統領が言及することはなかった。
「あまり朴大統領を追い込むと、何を言い始めるのかわかりません。日本としては不用意な発言を避けて、慎重につきあっていくべきでしょう」(東京新聞編集委員・五味洋治氏)
しばらくは、中韓両国の不毛な「反日」に心を乱されずには済みそう。だが、一見おとなしかった会談の先には、まだまだ両国の日本に対する「クレクレ攻勢」が控えている情勢なのである。