15年末に突如解決に向かった「慰安婦問題」。その背後には、アメリカによる強大な力の働きがあった。フランスのパリで相次ぐISによるテロや中東の分断など、イスラム圏ではすでに戦争が起きている。日米英と対する中国・ロシア・テロ組織との世界大戦はどう動いていくのか。
2015年10月16日、韓国の朴槿恵大統領(63)をアメリカは国賓で招いた。とはいえ朴大統領への態度は、冷遇そのものだった。この時、韓国が約束させられたのが日中韓3カ国による首脳会談の実現である。
「アジアの安全保障を握る上で、3カ国で話し合い、和解の場を作ろう」
というのが、アメリカの思惑だった。そして、同年11月1日、安倍晋三総理大臣(61)、朴大統領、李克強首相(60)による日中韓首脳会談がソウルで行われる。アメリカのカーター国防長官が臨席していたことから米国主導での3カ国会談であったことは明らかだ。同日共同記者会見も開かれたが、会談の内容は発表しないとされ、安倍総理は短いコメントを読み上げるにとどまった。地域協力について総理は、
「気候変動への対応など国際社会が抱える諸課題についても話し合い、協力していくことで一致した」
としたものの、会談で話し合われた内容は、安全保障を軸としたものであったとされている。しかし韓国は、この場においてもアメリカ支持を明確にしなかったのである。
日米同盟を中心にアジア諸国の動きは加速した。
同年11月2~4日には第3回拡大ASEAN国防相会議「ADMMプラス」が開催。カーター国防長官は、3カ国会談からそのまま「ADMMプラス」にも出席。再び韓国に、「どちらか?」と選択をせまり、ついに韓国がアメリカ支持を表明させられたわけである。
その後、発表されたのが、2015年内の慰安婦問題等、日韓に存在する問題の全面解決だ。問題が解決しない限り、日本当局は、「韓国との話し合いに応じられない」という強い立場を維持し続けた結果でもある。
一連の動きの中で明確になったのが、日米にイギリスを代表とするNATOが加わった「新連合国」体制ができあがったことである。
これらの動きに合わせるように10月28日から開始した「航行の自由作戦」は完全な軍事オペレーションである。米軍──特に南シナ海を管轄する在日米軍のある沖縄は、すでに戦時下に繰り込まれている。
米空母は、中国が一方的に設定した排他的経済水域を自由に航行。中国の潜水艦に半日以上追尾された際には、意図的にその事実を発表した。潜水艦の価値は見えないことにあるわけで、見える潜水艦など、ただの棺桶に過ぎない。
また、一部情報筋によると中国潜水艦が米空母を追尾している間、別の米軍艦のソナーからは、中国の潜水艦に向かって繰り返し探信音「ピン」が打ち続けられたとされる。「ピン」が当たった、潜水艦内には大音響が響くという。中国潜水艦の乗組員たちはパニックになったに違いない。米艦隊は南シナ海の南北に配置され、中国を挟み撃ちにしている。
沖縄の南側とインド洋の北側では恒常的に米軍が軍事演習を行っているが、日本とフィリピンさらには、イギリス、オーストラリアも参加を表明している。特にイギリスと日本は、1月8日に外務・防衛閣僚による2+2会談を開催。日本側から岸田外務大臣と中谷防衛大臣が、イギリス側からハモンド外相とファロン国防相が話し合った。その結果、
【1】今年イギリス空軍が最新鋭戦闘機「タイフーン」を日本に派遣し共同訓練をすること
【2】新型空対空ミサイル(JNAAM)の研究を共同で行うこと
などで合意。中国に対して日米英が中心となった新連合国の関係は、強固なものになっている。
(経済評論家:渡邉哲也)