テリー これだけの作品を作ったあとだと、また新たな創作意欲が湧いている感じじゃないんですか?
紀里谷 はい、次の映画の準備がもう始まっています。実は、この対談の前にも打ち合わせをしてきたんですよ。脚本が完成したら、来年から本格的に動きだす感じですね。
テリー また海外で撮影する作品なんですか?
紀里谷 そうです。次の作品はアクションなしの、人間ドラマをメインに据えたものになる予定です。
テリー 紀里谷作品といえばド派手なアクションっていうイメージだったけど、もともとはそういったジャンルの映画が好きなんですか?
紀里谷 いや、いろいろなタイプの映画が撮りたいと思っていて、やっとそういう映画を撮れることになったということです。アクション映画ってきわめて科学的な、独特の力学があるんですよね。それをこれまでの3作品で10年かけて勉強してきたので、今度は新たに、人間の内面に入っていくような映画にしたいと思ってるんです。
テリー 俺は、この「ラスト・ナイツ」で日本の観客の、紀里谷さんに対する見方が変わると思うんですよ。こういう作品も撮れる人なんだって。やっぱり今までは「CGを使うのが得意な監督」というイメージがあったからね。
紀里谷 以前は予算がなくてCGに頼らざるをえない部分があったんですよ。だからそう思われるのもしかたないですね。ただ、そういうイメージは、これから一つずつ剥がしていかないとダメだとは思います。
テリー この映画がそのきっかけになるんじゃないかな。こう話してみると紀里谷さんの人柄も‥‥。
紀里谷 いけすかない、生意気なやつだと思ってたんじゃないですか? ホントに俺、「何でこんなに嫌われるんだろう?」ってぐらい、会ったことのない人に嫌われてるんです(笑)。
テリー いや、俺は前から映画も評価してるし、悪く思ってないですよ。でも、会ってみると確かにイメージが違う。すごくバランスの取れた人ですよね。紀里谷さんなら極端な話、「男はつらいよ」でも撮れちゃうと思うな。
紀里谷 ホントですか。撮らせてもらえるなら、ぜひやってみたいですね。とにかく、ちゃんとした脚本があれば、どんなジャンルの映画でもチャレンジしてみたいんです。
テリー 今後、組んでみたいと思っている役者さんはいるんですか?
紀里谷 北野武さんですね。モーガンを見ても思ったんですけど、役者って「現場でどう役を作るか」じゃなくて、結局は「どう生きてるか」って話だと思うんですよ。ふだんからいろいろなものを見て、いろいろな経験をして、すごい生き方をしていないと、そう映らない。その意味では今、たけしさんが日本で一番の役者だと思うんですよね。
テリー 今度会ったら伝えておきますよ。
紀里谷 マジですか!? 実は、すでにたけしさん用の企画も一つ考えてるんです。
テリー この映画を観せたら、たけしさんもオファーを受けるんじゃないかな。ホントにそう思いますよ。
紀里谷 ありがたいです。
テリー これからもハリウッドで映画を撮り続けていくんですか?
紀里谷 いや、オファーがあれば中国でもイランでも、どこでも行きますよ。もちろん、日本でだって。単純に映画を撮らせてもらえるなら、それだけで俺はうれしいんです。
◆テリーからひと言
紀里谷さんの映画への情熱はホントにスゴい! ぜひ今度の東京オリンピック開催時には、市川崑監督のようなドキュメント映画を撮ってください!