ドロドロの愛憎劇など独特の世界観が時に社会現象まで巻き起こした、フジテレビ系・東海テレビ制作の“昼ドラ”が来年3月で52年の歴史に幕を下ろすという。真っ昼間から放映されてきた、欲望渦巻く扇情シーンの数々は半ば伝説と化したものだ。まさに女優たちが必死の決意で挑み続けた、「伝説の場面」を特選したい。
10月28日、スポーツニッポンが「フジの昼ドラ放送終了」を報じ、多くの嘆きの声が聞かれた。52年という歳月が、固定ファンとともにさまざまなドラマを生んできた証拠である。
昼ドラ視聴歴40年を誇るドラマ評論家・ペリー荻野氏も落胆を隠せない。
「フレッシュ女優の登竜門とも呼ばれる、NHK朝ドラに対し、昼ドラは女優が熟していく過程を見られる貴重な場でした。彼女たちの骨太な根性が入っているドラマがなくなるのは寂しいかぎりです」
その歴史を振り返れば、シリーズ当初の60~70年代は文芸作品が多く、現在の淫靡なイメージとはかけ離れていたようだ。
転機となったのが、86年に田中美佐子(55)主演で放送された「愛の嵐」に始まり、高木美保(53)を主演に迎えた、「華の嵐」(88年)、「夏の嵐」(89年)と続いた「嵐3部作」である。
中でも、最高視聴率が19%にも及んだ「華の嵐」は爆発的ブームとなった。
華族の娘として生まれ、「貴族としての誇り」と「身分違いの恋」に揺れる女の一生を描いた同作は女性の根強い支持を受けたのだ。中には会社のトイレにポータブルテレビを持ち込み、秘部を刺激しながらこっそり観賞するOLも現れたほどだという‥‥。当然、男性にとっても見どころ満載の作品だった。芸能ジャーナリストの佐々木博之氏が当時を振り返る。
「映画『Wの悲劇』(84年・東映)の濡れ場で高木が披露した凛とした背中は、今でも覚えています。その光景が頭の中にあるので、高慢ちきなお嬢様役は適役でしたね。男の間でも話題になっていましたよ」
ドラマ評論家の上杉純也氏も同作に熱狂した一人だ。
「高木は清純派で売っていましたが、貴族の服に包まれた肉体は相当ムチムチしていましたからね。そのギャップのエロさに心奪われました。『愛欲』をテーマとする現在の昼ドラ路線を作った最大の立て役者でしょう」
半世紀という長きにわたる歴史を刻んだだけに、昼ドラには大きな変遷があった。その後、21世紀に入ると徐々に過激なものが目立ち始める。
「ここ10年ほど、昼ドラに出る女優は、離婚など私生活で何らかの分岐点に立っているのではと、芸能レポーターの間で話題になりました。横山めぐみ(46)、遠野なぎこ(35)、大河内奈々子(38)、安達祐実(34)‥‥。並行してドラマの性描写が露骨になり、昼ドラが“女優再生ドラマ”と化してきたんです」(前出・佐々木氏)