一方、日本では驚きをもって捉えられたソフトバンクのチームリーダー・松田宣浩(32)の海外FA権行使。それに対して、メジャー側の反応は冷ややかだ。日本ではパドレス、ナショナルズ、ホワイトソックスなど、興味を示しているとされる球団名が報道されているが、実情はまるで違った。
「GM会議では日本のメディアが、内野手を補強ポイントにするチームのGMを捕まえては『松田に興味があるか。ビデオを見たことがあるか』と質問している。ほとんどのGMは『それは誰だ? 知らないな』と言いつつも『そんな選手がいるなら調べてみよう』と社交辞令を述べる。すると、それが興味があるとか調査をするといった報道に変わるわけです。実際に獲得を検討しているのはパドレスだけですよ」(メジャー球団関係者)
今オフはたまたま三塁手がFA市場で手薄だという追い風のせいで、ようやく全米メディアも松田の名前を取り上げ始めたが、現場レベルではほとんど知られず、獲得するつもりもないようだ。ただ、パドレスは野茂英雄氏の獲得で大成功した元ドジャースのオーナー、ピーター・オマリー氏の親族が経営参画している事情があり、球団として日本進出を念頭に置いている。そのため広告塔として、松田を筆頭に日本人選手の加入を熱望しているという。複数球団の松田獲得参加報道はさながら、パドレスとの「出来レース」の様相を隠す「盛り上げ情報」にすぎないのだ。
さて、すでにメジャーで活躍している日本人選手のFA事情に目を向ければ、今季ノーヒットノーランを果たした岩隈久志(35)が、お買い得選手の一番手としてクローズアップされている。複数年契約を求め、マリナーズからの1年約19億円のクオリファイング・オファー(所属球団が、メジャーで決められた金額をまず優先的にオファーできる制度。拒否されれば、移籍先からドラフト上位指名権を譲渡される)を蹴ったが「3年36億円」を最低ラインに、先発3番手以上の評価でヤンキースなど複数球団による争奪戦になっている。
死球による脳震盪で終盤に苦しんだ青木宣親(34)にも、オリオールズなどが触手を伸ばす。メジャー4年間の通算出塁率は3割5分3厘。リードオフマンとして計算が立つにもかかわらず、2年で約12億円程度と、岩隈同様に手頃な点が人気の秘密である。
はたして来年はどの選手がどこのユニホームを着て活躍しているのだろうか。