プロ野球のストーブリーグが海の向こうでも幕を開けた。海外FA権やポスティングシステムを使ってメジャー移籍をもくろむ大物選手たち。交渉現場では札束が飛び交う争奪戦が繰り広げられる一方で、日本の報道とはまるで異なる評価とやり取りもあったのだ。
11月上旬にフロリダ州で開かれた、メジャーリーグのGM会議。その水面下では、日本のメディアが報道しない生々しい争奪戦がスタートしていた。注目されるのは、ポスティングによるメジャー移籍が濃厚と見られる広島・前田健太(27)だ。メジャー各球団は数年前から日本にスカウトを派遣して前田を調査。最も熱心なダイヤモンドバックスをはじめとして、ドジャース、レンジャーズ、カブス、レッドソックス、パドレスなど、5球団以上が名乗りを上げている。
「マエケンのポスティング移籍には上限24億円の入札金が必要ですが、年俸10億から15億円の5年契約を基本とした争奪戦が展開されそうです。100億円未満で収まる『お買い得選手』で、メジャーでは先発ローテの3番手から5番手の評価ですが、WBCなどの結果を見ると、確実に勝ち星が計算できるため、人気が集まっているのです。先発投手が手薄で一線級を取り損なった球団が、余った資金をつぎ込み、入札金と合わせ総額100億円を下限とした大型契約を持ちかけることも考えられます」(現地メジャー関係者)
2年前に楽天からヤンキースへと移籍した田中将大(27)の7年190億円という大型契約と比べて約半分の評価。だが、今季の推定年俸が3億円のマエケンにしてみれば、約3倍から5倍以上もの年俸を手にすることになる。蓋を開けてみれば10球団以上の争奪戦に発展する可能性は大だ。
しかし、全ては広島がポスティング移籍を認めなければ始まらない。「プレミア12」が終わりしだい、広島は方針を発表すると見られるが、なかなか煮えきらない理由がある。凱旋帰国した「男気」黒田博樹(40)の進退が決まらないからだ。今季最終戦後も来季の現役続行を断言せず、球団関係者をやきもきさせている。
「もし黒田が引退となると、広島は最後にもう1年、マエケンを残留させる可能性がある。エース級が2人同時に抜けるのは非常に痛いですよ」
とは、広島のスポーツメディア関係者の声である。
GM会議で黒田の代理人がメジャー球団に売り込みはかけなかったが、「クロダはどうするのか。またメジャーに帰ってくるつもりはあるのか」と、復帰オファーを念頭に置いて情報収集しているメジャー球団関係者の姿も見られた。黒田を巻き込んでのマエケンの動向を注視する必要がある。